本校の研究について
本校の研究について
本校は、令和4年度より、文部科学省研究開発学校の指定(令和4年度~令和7年度)を受け、『個の生活知を豊かにする新領域「経験」と、体験を価値の創造につなぐ「じぶん」の時間を創設し、経験から新たな知や価値をつくる教育課程に関する研究開発』を行っている。
~研究開発の概要~
新領域「経験」は、2つの小領域で構成し、異学年集団で活動を行う。第1小領域は、多様な「ひと・もの・こと」と出合う経験を通して、学問につながる個の生活知を豊かにする「はっけん」である。この時間で獲得した生活知と教科学習における学問知を組み換えながら学習するプロセスを通して、知の創造を目指す。第2小領域は、実社会とつながるプロジェクト活動を通して、様々な成功や失敗を味わう経験により、生き方・在り方につながる個の生活知を豊かにする「ちょうせん」である。 「じぶん」の時間は、経験領域での質の高い体験をもとに、同学年集団で議論を深め、子どもたち自ら変容し、成長するプロセスを通して、価値の創造を目指す。経験と知、経験と価値を構造化した教育課程を実現することにより、「自律的に学ぶ力」「関わる力」「創造する力」を育み、「分かち合い、共に未来を切り拓く子ども」を育成することが期待できる。

~新領域「経験」とは~
本校では、教科学習において知を創造するためには、「経験」と「学問」を組み換えながら学習するプロセスが必要だと考えている。子どもたちは、概念や知識を累積的に学ぶのではなく、学問知と生活知の関係を調節し、組み換えつつ学ぶ存在であると捉えており、このようなサイクルが重要であることは、これまでの教育学研究の文脈からも導くことができる(例えば田中耕治、2017)。 また、個の生活知が豊富にあることで、子ども一人一人の考えが教科学習の中で生かされる。そのためには、子どもたちの経験、つまり個の生活知が豊富であることが重要な役割を果たすと考える。現代の子どもたちは、今の大人に比べ、デジタル時代に関連した多くの生活知をもっており、パソコン等で知らない知識をすぐに獲得することができる。しかし、知識は単独で存在するものではなく、様々な知識や経験と結びつくことで、より質の高い知識に変換されることを考えると、このままでは獲得した多くの知識が組み換わることは期待できない。
さらに、時代は変化してきており、昔に比べ、現代は日常生活の中で直接体験により自然と学んできた生活知や体験が不足しているといわれている。このような状況を踏まえると、子どもたちは、学問につながるための個の生活知が十分に蓄積されていないのではないかと考える。
本研究では、これらの個の生活知の不足を、異学年集団で行う経験領域「はっけん」と「ちょうせん」の2つの活動によって補い、個の生活知を豊かにすることを目指す。
(1)「はっけん」の時間

「はっけん」の時間は、異学年集団で多様な「ひと・もの・こと」との出合いを通して、学問につながる個の生活知を豊かにすることを目指す。教師は教科学習につながる生活知を想定し、異学年集団における学びの良さを生かした授業づくりを行う。つまり、「はっけん」を行うことにより、同学年での教科学習において、生活知と学問知の組み換えが起こりやすくなり、子ども一人一人がもつ生活知が教科学習の中で生かされる状況をつくることができると考える。

(2)「ちょうせん」の時間


~「じぶん」の時間とは~

経験領域での質の高い体験をもとに、同学年集団の「じぶん」の時間において話し合い、子どもたち自ら変容し、成長するプロセスを通して、価値の創造を目指す。主に経験領域で活動したことを授業の中で扱うことで、子どもたちは、自分事の課題として、より主体的に自分自身の在り方を考えることができる。そして、同学年集団の中で、友達の意見と自分の意見を比べたりつないだりしながら、自分の価値観そのものを見直して変容するというプロセスを経て、価値創造が行われると考える。
