高子:松男君,平賀源内って知ってる。 松男:平賀源内?昔の侍みたいな名前だなあ。ああ,聞いたことあるよ。日本で 初めて電気をつくった人だろう。それに,ぼく,前に「源内うどん」という名前 のうどん屋さんへ入ったことがあるよ。 高子:電気とうどん,ずいぶん面白い組み合わせね。まあ,源内うどんというのは うどん屋さんが平賀源内の名前だけ借りたものだと思うけど・・・。松男君の 言うとおり,平賀源内は江戸時代の武士で,電気のことをはじめ,薬をつくっ たり,小説を書いたり,いろんなことをやった人で,一言でどんな人だったか 説明するのは大変な人みたいよ。 松男:へえ,何だか,面白そうな人だなあ。 高子:実は,わたしこの間お父さんと一緒に平賀源内の家に行ってきたのよ。 松男:ええ!本当?平賀源内の家ってどこにあるの。 高子:平賀源内は香川県の志度町というところで生まれ育った人で,地元の人か らは源内さんと呼ばれていて,とても親しまれているの。平賀源内の生まれた 家は今も志度町に残っていて,平賀源内遺品館として源内さんのつくったもの をいろいろと展示しているのよ。 松男:へえー,そうなのか。ぼく知らなかったよ。ぼくも行ってみたいな。 (そこへ おじいちゃんがやって来ました。) おじいちゃん:二人ともここで何を話しているんだい。 高子:平賀源内のこと。わたしがこの間志度町にある平賀源内の家へ行った話を したら,松男君も見に行きたいって。 おじいちゃん:そうか,松男君は行ったことがなかったのか。平賀源内は江戸時代 中期の1728年に高松藩の武士の子として志度町に生まれ,エレキテルという 電気を起こす機械などいろいろなものをつくって活躍した人なんだよ。 松男:へえー,面白そうな機械だね。平賀源内はエレキテルの他にどんなものを つくったの? おじいちゃん:そうだな,いろいろあるんだけど・・・。源内は小さい頃からいろいろ 工夫して,大人がびっくりするようなものをつくるのが好きだったらしい。 お神酒天神といって掛け軸の天神の顔が赤くなる仕掛けをつくったり,大きく なってからはエレキテルの他に,燃えない布(火浣布)や,温度計,方位磁石, 距離計,水準器をつくったり,薬草を使っていろいろな薬をつくったり,羊を飼 って国倫織という毛織物を織ったり,自分で白い良い粘土を見つけて源内焼 という焼き物なんかもつくったんだよ。 松男:へえー,すごいなー。ぼくも見てみたい。 おじいちゃん:それじゃあ,今から志度町にある源内遺品館に行ってみようか。 (3人は国道11号線を東の方向に徳島の方に向かって,車でおよそ40分ほど 走りました。志度湾に近い真覚寺というお寺の横に「平賀源内先生旧邸」と 書いた大きな標識の立った家がありました。) おじいちゃん:さあ着いたよ。ここが平賀源内が生まれた家で,今ではこうして源内 の発明した物や遺品を展示しているんだ。 松男:古い家だけど,こうして今でもちゃんと残っているんだね。焼き物や薬をつくる 道具とか本もあるね。これも,源内さんが書いたの? おじいちゃん:そうだよ。平賀源内は最初は大阪で医学や本草学を学び,今で言え ば科学者だったが,また,小説家,劇作家でもあり,滑稽本(根無草,長枕 褥合戦,お千代伝,菩提樹の弁,西洋画談,飛んだ噂の評の6編)や浄瑠璃 (8編)なども書いて,当時の流行になり,神霊矢口渡しは浄瑠璃の台本で, 上演されて大評判となり,源内の死後,歌舞伎にも取り上げられ,現在でも 上演されているよ。 高子:源内さんって小説家,劇作家としても一流だったのね。 おじいちゃん:また,源内は鉱山や温泉を探し当てて開発し,利用できるようにした り,江戸では日本で最初の物産展(博覧会)も開催し,草木,鳥獣,魚介,昆虫, 金玉土石など二千余種のうち,重要な物330種を上中下に分けて解説した物類 品隲という本を出版しているんだよ。また,長崎で西洋画も学び,自らも人物像 などを描き,地方の大名に絵の描き方を教えたりしている。 高子:源内さんって陶芸家でもあり,画家でもあったのね。 おじいちゃん:他に,江戸で女性のために源内櫛という櫛もつくったが,高価にもかか わらず,とぶように売れたらしい。また,煙管に火をつける源内ライターもつくっ た。もっとも,これはあまり利用されなかったみたいだけど。 松男:本当に,平賀源内ってすごい人だね。今はこんな人いないのじゃないかなあ。 おじいちゃん:そうだね,今は何でも仕事が専門的に細分化されており,科学だけで も細かく専門が分かれていて,自分の専門の分野だけやるのが一般的になって いるね。源内さんのように,1人でいろんなことをやる人は少なくなっているね。 高子:科学が進歩して,それだけいろんなことを1人でやるのが難しくなっているの かしら。 おじいちゃん:それもあるけど,現代は大勢の人がいろんなことを分担してやるように なって,一人一人がそれで生活を営むようになっているから,自分の持ち分の 仕事だけすればいいという気持ちが強いのじゃないのかな。 松男:ぼくは学校でいろんなことを勉強していて,もっと勉強する科目が少なかったら いいのにと思っていたけど・・・源内さんのようにいろんなことを勉強するのも楽し いことなんだね。 高子:いろんなことを勉強しておかないと,後でいろいろ不自由なことがあるのじゃ ないかしら。だから,若いときはしっかり勉強しておくべきだと思うわ。 おじいちゃん:だけど,周りからあまり勉強しろ,勉強しろ,と言われても勉強できる ものじゃない。源内さんも決して言われたからやったのではなく,自分が面白い と思ったからやっただけなんだよ。源内さんのころは理科や社会などの科目は ないし,1人の先生からいろんなことを教えてもらったみたいだね。 高子:源内さんは良い先生にめぐり会ったのね。 松男:それで勉強が面白くなったんだね。 おじいちゃん:それに,源内さんは長崎に何回も勉強に行っているし,江戸でも随分 勉強しているよ。 松男:勉強は学校だけでするんじゃないんだね。ぼくもいろんなところで源内さんの ような勉強ができたらいいのにな。 高子:わたしも勉強は学校でするものだと思っていたけど,学校ってもっと広いんだ わ。この社会全体が,学校だと思って勉強しなくちゃだめなのね。 おじいちゃん:2人ともいいところに気がついたね。源内さんのように広く世界を視野 に入れて,自分のしたいことを思う存分できるように,いろんなことを見て,経験 して,勉強して,世界に羽ばたいていって欲しいと思います。 |
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