松男:高子ちゃん,これ何かわかる? 高子:見ればわかるわよ。アメでしょう。でも,透明でうすい板のようなきれいなアメ ね。色もちょっと変わってるし。 松男:こういう色をあめ色というんだよ。ベッコウアメや黄金糖と呼ぶこともあるらしい んだけれど・・・。 高子:どこで買ったの。 松男:この前お父さんと琴平町の金比羅さんへ行ったときだよ。「五人百姓」といって 赤い大きな傘をさした店が5軒あるんだけど,そこでこのベッコウアメ」を売って いたんだ。 高子:このベッコウアメってどんなものからつくられているのかしら。 松男:お父さんが言うには,家にある白い砂糖に水を少し加えて火にかけて融かせば いいんだって。こがさなければ自分の家ででも簡単につくれるそうだよ。 高子:砂糖と水だけ?ふしぎね。 松男:そういえば,近くの店で売っていた綿菓子も砂糖だけからつくられるそうだよ。 高子:そういえばそうね。ところで,金比羅さんと砂糖。何かつながりがあるのかしら。 (そこへおじいちゃんがやって来ました。高子ちゃんはおじいちゃんにきいてみる ことにしました。) 高子:おじいちゃん,このベッコウアメ,松男君が金比羅さんで買ったらしいんだけど, 金比羅さんと砂糖って何か関係あるの。 おじいちゃん:ああ,あるとも。金比羅さんというより香川県と関係があるんだよ。「讃 岐三白」といって,香川県の名産といえば三つの白いものが有名でな。一つは 塩。もう一つは綿。もう一つが砂糖だというわけなんだよ。 高子:塩は知っているけど,綿や砂糖が香川県でできるなんて知らなかった。信じられ ない。 おじいちゃん:いや,今はもう香川県ではつくられていないよ。昔のことさ。でも,そんな に昔のことでもないんだ。高子のお父さんが小さい頃は砂糖の原料になるサトウ キビ畑があちこちにあって,おやつの時間になると一本抜いてきて皮をむいて かじっていたものだ。甘い汁がとてもおいしいんだよ。 松男:へえー,僕も食べてみたいな。昔は香川県でも砂糖はでできていたのか。 おじいちゃん:サトウキビは,江戸時代の中頃,水不足に困っている農民のために, 水田を必要としない作物を作ろうと,高松藩の殿様が向山周慶という武士に作ら せたのが始まりといわれているよ。 松男:サトウキビって日本のどこででも作られていたわけじゃないんだね。 おじいちゃん:そうだよ。薩摩藩(今の鹿児島県)や沖縄地方などでつくられていたん だけれど,そのつくり方は秘密で,よその土地には知らせないようにしたんだ。 だから向山周慶は苦心しながら砂糖作りを研究したんだ。 高子:どんな苦心をしたの? おじいちゃん:まずサトウキビのよく育つところを探すこと。水に恵まれていて砂や小石 の多い土地を探したんだ。そこが引田町だったというわけだよ。その後,肥料に はニシンかすがいいことを見つけたり,石灰を使って大きな砂糖の結晶を作り出 したりしたんだ。でも,どうしても白い砂糖ができなかった。布でくるんだ砂糖を泥 の間に入れて色を白くしようとしたり,魚の骨粉を使って白くしようとしたりした が,うまくいかなかった。 高子:方法が良くなかったの。 おじいちゃん:いや,そうではなくてサトウキビの品種がよくなかったんだ。薩摩藩に あるようないい品種だったら白い砂糖ができたと言われているよ。 松男:それじゃあ,香川県でどうして白い砂糖がうまくできるようになったの。 おじいちゃん:それにはつぎのような話がある。薩摩藩に関良助という人がいてな。 その人が旅先で病気になったんだ。その時介抱して助けたのが向山周慶の兄 だったのさ。そのお礼に関良助はよい品種のサトウキビを弁当箱に入れて香川 県に持ってきたんだよ。もし見つかると命はない,まさに命がけのことだったん だ。こうしてよい品種を手にいれて,やっと香川県にも白い砂糖ができたという わけだよ。 高子:へえ,何でもないような砂糖でも,できるまでは大変だったんだね。ところで,今 では香川県では砂糖は作られていないの。 おじいちゃん:いや,今でも引田町の相生地区に和三盆糖という砂糖を作っているとこ ろがあるよ。見に行こうか。 高子:和三盆糖か。いい名前ね。わたし見に行きたい。 松男:おもしろそうだね。行こう。行こう。 (3人はそれから車で国道11号線を東に向かいました。しばらくして,屋島のふも とのとある施設に入りました。) 高子:あれ,ここは四国村じゃないの。ここで砂糖ができるの。 おじいちゃん:いや,ここに昔サトウキビを絞った小屋があるんだ。 松男:丸い小屋だね。牛を使ってサトウキビを絞っていたのか。牛がこすった後が削ら れているのがわかるよ。すごいね。 ( それから,3人はさらに国道を東に進みました。車は引田町の相生地区に入り ました。) おじいちゃん:さあ着いたよ。ここで,さっき話した和三盆糖を作っているんだ。和三盆 糖はサトウキビの汁(砂糖汁)に石灰を混ぜ,あくを取る。そうしてできたのが白 下糖といって,これは「瓦せんべい」の材料にもなる。そして,これを細かく砕き, よく練る。これを「みがく」というんだ。これを麻の袋に入れ,木箱に詰め,しぼる。 砂糖のみつをとるためだね。これを何度も繰り返すことで,だんだんと白い砂糖 になっていくんだよ。 松男:だんだん量が減っていくね。 おじいちゃん:そうだよ。はじめあった砂糖の半分くらいになるかな。でも,江戸時代に はとても貴重な白い砂糖ということで,大名が贈り物をするときなどに使ったそう だ。今でもとても高価で高級な和菓子などに使われているよ。 高子:このお砂糖を固めたお菓子,とっても甘くて口の中で溶けてしまったわ。 松男:こんな砂糖を作り出した向山周慶さんて立派な人だったんだね。 おじいちゃん:この向山周慶と関良助を神様にした向良(こうら)神社が近くにあるよ。 後で見に行こうか。 高子・松男:はい。 |
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