3 思考力」を育成する支援
 頭の働かせ方=思考様式を,結果として表現されることばに近いことばで意識させたり,その有効性をまとめたりする
 話しことばであれ,書きことばであれ,子どもから発せられることばは,頭の中で考えたことの結果である。言い換えると,思考が生み出した結果としての表現物である。
したがって,頭の中の過程に働きかけることで,これらの表現物もよりよいものとなるが,その働きかけも,ことばで行われる。
 それでは,どのようなことばで思考に働きかけることが望ましいのか。
それは,結果として表現されることばに近いことばである。
 例えば,順序を示す接続詞に目を向けて,段落のまとまりや関係を考えるという学習において,
「順序に気を付ける」ということばでの働きかけでは,不十分である。子どもは,このことばから,さらにどんなことばで表現すればよいかを想定しなければならないからである。
ならば,思考過程で吟味され,選ばれていることばとその結果として表現されることばを近づけてやればよい。「順序に気を付ける」ということばの代わりに「『まず・次に・最後に』を使う」というような頭の働かせ方=思考様式を意識させるのである。
 ここで重要なことは,「『まず,次に,最後に』を使う」場合の効果を吟味していく活動をとることである。この有効性が実感されることによって,子どもたちにも定着しやすい。
また,これらの思考様式が増えてきたら,思考様式同士を束ねていくことも必要となる。例えば,「『第一に,第二に,第三に』を使う」や「『最初に,次に,さらに』を使う」といった思考様式を,「順序を表すことばを使う」として束ねることで,転移しやすくなるのである。
 以下のような思考を転移させる場を設定し,その習熟をめざす
 ○ 思考様式を用いた表現を同教材・同領域で見つけたり使ってみたりする
 ○ 思考様式を用いた表現を他教材・他領域で見つけたり使ってみたりする
 「思考力」が「確かな学力」として定着するためには,「生かす経験」が必要である。
このことについては,『2「思考力」を育成するための単元編成』でも述べたが,1時間の授業レベルにおいては,前記のような場を設定し,その習熟をめざしたい。
 なお,思考様式が,他教材,他領域において形を変えている場合は,転移・習熟させるためのさらなる手だてが必要である。例えば,「順序を表すことばの一つ」が書かれていない場合,「順序を表すことばが使われている位置関係を確認する」といった支援が必要となろう。「順序を表すことばは,文頭に使われるものであり,そのことばだけで,そのまとまりの内容を表している」などの確認をするのである。「『まず』とは書いていないが,『何をおいてもこれだけは考えておかなければならない。』という文が1文目にあった場合,この文を順序を表すことばで考えると『まず』に相当する。」という発見ができることをめざすのである。
 このことが,思考様式の習熟に大きく作用する学びをつくるのである。