○ 話す過程に応じた力としての位置付け
 新学習指導要領は「話すこと」の内容を言語活動の種類、「書くこと」は書く過程で構成されている。話すときも、相手意識・目的意識を大切にしなければならないだろうし、正しく話すためには取材をしなければならない。さらには、話の構成を考え、実際に話をしたり、自分の話し方について振り返ってみたりする力も必要である。
 そこで、「話すこと」も、「書くこと」と同様、その過程に応じた力として位置付けていくことにした。このことによって、教師は各過程において必要とされる力を具体的に自覚することができると同時に、領域相互の関連指導も行いやすくなるのではないかと考える。
 
○ 話し合う力を「互いに対応する力」と「話し合いを進めていく力」で構成
 対話系の学習では、スピーチでの話す力・聞く力の上に「互いに対応する力」と「話し合いを進めていく力」を駆使してくことが付加される。ところが、「話し合うこと」について新学習指導要領では、例えば「互いの考えの相違点や共通点を考えながら、進んで話し合うこと。(小学校第3学年及び第4学年)」となっており、前述の「互いに対応する力」と「話し合いを進めていく力」とは何かが具体的に見えにくい。
 よりよく(正しく)話し合う力を身に付けるためには、このような「互いに対応する力」、「話し合いを進めていく力」の位置付けが必要である。

 
○ 「非言語コミュニケーション(表情、しぐさなど)」、「ユーモア」、「緩衝表現」
 まだ、語彙や表現方法の獲得が不十分な子供たちにとって、非言語的情報は、時にことば以上の意味を伝えることがある。ユーモアも単なるコミュニケーションの潤滑油としてだけでなく、子供たちの活発な思考(柔軟で立体感のある創造的な思考)を促す役割を果たす。また、実際のコミュニケーションの場における緩衝表現を身に付けることによって、より豊かな人間関係を構築していくことができるようになるであろう。


○ 「あいさつ・返事」、「敬語」、「聞き手として向き合おうとする態度」
 学校では、ことばの教育を行っているはずなのに、実際の日常生活に生かされていないと批判されることが多いのは、あいさつ・返事であろう。敬語も同様である。また、近年の子供たちは、話し手に対してきちんと向き合おうとする態度も弱くなってきており、心構え・態度の指導から立て直していかなければならない必要性を強く感じる。これらのマナーが身に付いているかいないかによって、人間関係や学習の成果も大きく変わってくるのである。
 このような、日常の言語生活において必要とされる力も、国語科教育に正当に位置付けていかなければならない。


 
○ 「書くこと」における思考過程に応じた力としての位置づけ
 
新学習指導要領の指導事項は、「書くこと」における文字による表現活動の進行過程および学習者の思考過程をふまえて設定されている。そこで、その視点を生かしつつ、次のような観点で整理した。
 @「相手・目的」・・・発信する相手意識、目的意識を明確にもつとともに、発信する自分 の立場や発信する内容を              自覚すること。
 A「発想・選材」・・・書くべき「何」をもつこと。そして、それを相手に的確に伝えるために、材料を集め、吟味するこ             と。
 B「構  成」・・・・ 書く目的や内容に応じて、材料を効果的に表現するための文章の骨組みを考えること。
 C「記  述」・・・・ 表現しようとする内容に最も適切と思われる語句を意味を考えて選ぶこと、また、文と文とのつな            がりや簡潔な表現などの工夫をすること。
 D「推敲・評価」・・・ 自分の書いた文章を客観的に見直すことで、さらに思考を深めること。また、学習者が相互に             学び合うことで深め合い高め合うこと。
 E「音声の文字化」・・聴覚(音声)でとらえた言葉を文字と結びつけて表記できること、また、視覚でとらえた文字を              認識し、同じように表記できること。 さらには、自分の言葉で要約や考えが書けること。


○ 「想像力・創造性」を培う
 私たちは、言葉と向き合い、吟味し、表現・発信していくことによって、言葉から広がる想像の世界を創造し、自己の世界を深化・拡充し、他と共有していくものである。そのような言葉のもつ「想像力・創造性」に向かうために必要な力として位置づけたいと考えた。 
○ 「感性」を培う
 文章を書く中で、言葉の価値(よりよい人間関係を構築する)を認識し、使用することを「感性」のひとつととらえ、小学校高学年より位置づけた。


○ 「手紙」を書くうえで必要とされる関心・意欲・態度を培う
 社会生活を円滑に送るうえで必要とされる「書く場面」の一つに「手紙」があげられる。電話やメールなどが広く普及した現在でも、手紙のやりとりがなくなったわけではない。手紙独自の特徴を生かして生活の中で活用しているのが実情であろう。また、手紙を通して、文章の向こうにいる人を思う心、その思いを言葉で表現する方法などにも気づいていけると考える。そこで、手紙を書こうとする関心、意欲、態度に直接結びつく力を発達段階に応じて考え、配列した。


  
○  「目的や意図に応じて様々な文章を的確に読み取る」力として
 新学習指導要領では、社会生活に必要な言語能力の育成を重視する観点から、目的や意図に応じて様々な文章を的確に読み取る能力を育成すること、また、情報化の進展などに適切に対応できる言語能力を育成することを重視している。そこで、その視点を生かしつつ、次のような観点で整理した。
 @「内容把握」・・・・書かれてある内容を的確に理解し、展開、状況、要旨などをとらえること。また、書き手の考え             や筋道を正確にとらえるために要約すること。
 A「語  句」・・・・ 文章に使われている語句に着目し、文脈の中での意味をとらえること。また、語句の効果的な              使い方に着目し、自分の言葉の使い方に役立てること。
 B「構成・表現」・・・書き手を意識し、その思考の流れに沿って構成をとらえること。また、自己の文章表現の構成              や展開に生かすこと。
 C「情報活用」・・・・必要な情報を抽出して読むこと。また、収集した情報を比較・分類し、関連づけたり加工したり              すること。さらに、自己表現に役立てること。

 
○ 「想像力・創造性」を培う
 私たちは、書かれている言葉を手がかりにして、書かれていないことを想像し、新たな意味や世界を創造する。そのような言葉のもつ「想像力・創造性」向かうために必要な力として位置づけたいと考えた。 
○ 「感性」を培う
 言葉、文章を読むことによって、言葉の響きを味わったり、その言葉をつむぎ出した書き手を感じたりしながら、言葉の価値に気づいていくことを豊かな感性ととらえ、位置づけた。
○ 「本との関わり」
 「読むこと」においては、読書に親しみ読書を通じて自己を豊かにし人間形成を図っていこうとする態度を育てることも重視されている。本との関わりは生涯学習につながる視点でもあり、豊かな人間性の育成を考える上でも重要であると考え、位置づけた。
 
○ 言葉と向き合うために必要な関心・意欲・態度に結びつく力として
  言語生活を円滑に営み、言語によって自己を豊かにし、よりよい人間関係を構築していくためには、言葉に対してどんな意識をもち、鋭敏に反応できるかが重要になると考え、言葉と向き合うために必要な関心・意欲・態度に結びつく力として位置づけた。