平成13年度  国 語 科 
 
1 「幼・小・中一貫教育」に向けた課題 
      

 子どもの読書離れ・活字離れ,コミュニケーション能力の欠如等が叫ばれて久しい。このような現代社会において,国語科学習では「生涯にわたって生きて働く言語の力」を育成していかなければならない。まさに実の場において話し,聞き,書き,読むことができる力のことである。また,これらの言語能力は,その場限りの力ではなく,様々な場や他の作品に転移させ,さらに発展させていくという力でなくてはならない。
 今,国語科では,幼・小・中12年間の系統的・継続的指導という展望に立ち,「生きて働く言語の力」を育成するための指導内容の再編,及びその支援と評価について研究を進めていくことが求められているのである。
 
   
2 課題に対する基本的な考え 
       
 言語活動の目的に応じた力としての指導内容の位置付け 

  何らかの言語活動を行う際,その時に学習者がもつ目的によって,身に付くであろう言語能力も異なったものとなってくる。したがっ
て,これらの力は,それぞれの目的や意図をふまえて育成されなければならない。新学習指導要領では「読むこと」の内容を目的に
応じた形で各学年を通じて系統的に配置しているが,「話すこと・聞くこと」は言語活動の種類,「書くこと」は書く過程という異なるカテ
ゴリーで内容を構成している。
 そこで,どの領域においても正確さ(論理性),豊かさ(感性,創造性),マナー面(社会性)等,言語活動の目的に応じた力として位置
付けることにした。

 言語活動の系統,言語能力の配列という視点からの見直し 

  村松賢一氏の言うメタ対話能力は,新学習指導要領では中学校に入って出てくるが,認知心理学の見解ではメタ認知能力は小学
校高学年あたりから発達してくるという。ならば,高学年からメタ対話能力を位置付ける必要があるのではないだろうか。小学校高学
年の教科書に登場するディベートなどの言語活動は,メタ対話能力が必要とされるのである。
 このように,各種の言語活動例とそれらを通して身に付く力が整合し,なおかつ,子どもの発達段階にふさわしいものとなるよう内容
の見直しを図ることにした。

 「基礎的・基本的な力」としての指導内容の明確化 

  例えば,高学年B領域(1)ア「・・・自分の考えを効果的に書く」は,具体的にどのような書き方を指導すればよいのかということがわか
りにくい。その結果,子どもの変容を見極めることや学習指導を改善していく方向性も見えにくくなるおそれがある。そこで,私たちはこ
れらの文言を,例えば「反論や質問を想定して書く」として位置付けることにした。 
 このように,他の内容についても,「普遍的・客観的」で「共有化可能」な力として位置付けることにより,基礎的・基本的な力を明確に
し,単元間,学年間,領域間等の系統性を捉えやすくしようと考えたのである。