No. 4                               平成12年3月14日発行


   目 次


特 集
平成11年度フレンドシップ事業について
 
 フレンドシップ事業は、教員養成課程において教員をめざしている学生たちを対象に、教員に要請される実践的な指導力の基礎を身に付けさせるために、大学と地方自治体の教育委員会とが連携して実施する文部省の経費による事業です。
 本学部では主に2年生を対象とした「教育実践基礎演習」という授業で本事業を実施しています。その際、学生たちが子どもたちとふれあい、子どもの気持ちや行動を理解し、実践的指導力の基礎を身につけることができるように、子どもたちの日常のありのままの姿に出会うことのできる野外教育の場において本事業を実施してきました。
 本年度は、五色台少年自然の家主催の「むかしの遊び広場」屋島少年自然の家主催の「ウィンターチャレンジイン屋島」に参加することを中心に、26名の学生と7名の学部教官とで、次のような内容で実施いたしました。
 
1)オリエンテーション(10月13日(水))
 「教育実践基礎演習」の概要と実施計画の説明
2)事前研修(10月27日(水))
 (1)野外教育の意義についての学習
  講話「豊かな体験が子どもの心をはぐくむ」
 (香川県教育委員会生涯学習課 花房長広先生)
 (2)「むかしの遊び広場」(五色台少年自然の家)
   「ウインターチャレンジイン屋島」(屋島少年自然の家主催)の概要説明
 (3)けん玉、コマ、お手玉、メンコ等の実習
3)事前活動
   @五色台少年自然の家(11月13日(土))、A屋島少年自然の家(1月29日(土))  において、補助者として必要な実践的な知識の習得のために事前訓練を行なった。
4)野外教育体験活動
    両自然の家の主催事業に班付きのリーダーとして参加し、専門職員の方の補助者と  して活動するとともに、子どもたちとふれあった。
   @「むかしの遊び広場」五色台少年自然の家(12月11日(土)・12日(日))7名
   A「ウィンターチャレンジイン屋島」屋島少年自然の家(2月11日(祝)・12(土))19名
5)事後研修(野外教育体験交流)(2月21日(月))
  当日のビデオを視聴しながら、両センターでの野外教育体験を交流し、そこでの体  験を振り返りながら、学んだことや発見したことなどについて意見交換した。
6)シンポジウム(2月28日(月))
  <講師>作花 典男 先生(香川県立五色台少年自然の家所長)
      西川 敏夫 先生(香川県立屋島少年自然の家所長)
      花房 長広 先生(香川県教育委員会生涯学習課主任指導主事) 
      長澤 憲保 先生(兵庫教育大学助教授) 
  <司会>藤本光孝(学部実施委員長・教育実践総合センター長)
7)報告書の作成・配布(3月末発行予定)
 


《受講生の感想から》
 
<2年生の男子> 子どもたちとの接し方について。これは、特に今後教員を志望している者としては、数え切れないほどの反省と経験を感じた。私自身がテーマとしてこのキャンプに行く前に考えていたことは、子どもたちと同じ視点で、そして同じ立場で考える事が出来るかどうかということだった。・・・・子どもと同じように楽しむのと、同じ視点で見るのとは全く別のことであると思う。楽しんだのは事実である。しかし、リーダーとして子どもの視点で物事を見ることができていなかったように思える。リーダーという立場がはっきり言ってしまうと曖昧な立場にあるがゆえの難しさと言うものがあるのかもしれない。その事を特に感じた。これがまた教師になると、また立場が全く変わるので一概には言えないかもしれないが、これが教師としての資質というものにつながるのかもしれないし、教師になるために必要な私に不足している能力なのかもしれない。この事を手に入れるためにはどうすればよいのか、これはもう「経験」しかないのかもしれない。この様な「経験」を手に入れるためにもこのようなキャンプは必要になってくるのだと思う。
 
<2年生の女子> 子どもは甘やかすとつけ込んでくるという見方が私の中にあったため、例えばある子が「リーダー荷物持ってよー。」と言ってきたとき、「だめだよ。自分で持ちな。」と子どもには少し冷たく感じられたのではないかと思われる対応をしてしまった。突き放すのではなく、もっと他に言い方があったのではないか、なぜ今この子は自分に甘えてきているのか考えるべきであったと反省した。
 また、前日の夜一生懸命作ったたこがうまく飛ばなかったり、壊れてやる気をなくしてしまった子どもに対し、「もう少し速く走ってみたら。」とか、「諦めんの。」と曖昧で中途半端な対応しか出来なかった。これでは上から「頑張れ、頑張れ。」というばかりの声かけで、そのための具体的な指示を与えないという教育的配慮が欠けていた。どうすれば子どもがやる気を取り戻せるか学校現場で実際に直面するであろう課題を発見した。
 


《学部実施委員の感想から》
 
 「子どもたちを本気で愛する心」をフレンドシップ事業で
                                    若井 健司(音楽教育)
 教育現場での指導や学生達の引率経験の少ない私とって苦手な仕事と思いながら加わったフレンドシップ事業「教育実践基礎演習」でしたが、大学の中では気づけない、感じれない貴重な体験できました。特に私は以前より学生達を大人と思うことができ、もっと信頼して行動、研究させたくなりました。それまで私は、大学での受け身の姿勢ばかりを見せる学生にこれから教育者としてやっていけるのか不安でした。また、教育実習で着慣れない正装をし教壇に立つ姿を見ても、本当の現場で役に立つのか不安がよぎりました。このような気持ちで屋島のウインターチャレンジに参加しましたから様々な指導や学生達への援助で大変な日になると覚悟していました。
 ところが正装もしていない学生達が、進んで子ども達と話したり、じゃれ合ったり、注意したりして私が大学や附属学校で見ることのない表情でコミュニケーションをとっているではありませんか。とても自然で子ども好きでないと見せられない顔です。子ども達も初対面とは思えないほどなついています。「愛されるより、愛するは難しい。」という言葉がありますが、私は、教師になるには大学の単位を揃えることより、まずは「子ども達を本気で愛する心」を育てることが大事だと今更ながら感じることができました。
 今、私は今回参加した学生に感謝したい気持ちです。
 
フレンドシップ事業に関わって
                                  内藤 浩忠(数学教育)
 私は、屋島少年自然の家で行われた「ウィンターチャレンジイン屋島」の手伝いに行く学生の引率をした。そこで感じたことをいくつか述べてみたい。
 2月11日から12日にかけて1泊2日でそれは実施された。内容は、主に「屋島登山」と「うちこみうどん作り」であった。小学生の活動を手伝うのが学生の仕事だった。屋島登山はなかなかハードで、?年前には富士山に登った実績も日頃の運動不足には勝てず、自分が登るだけで精一杯だった。今後この事業に参加する教員を各教室から選ぶときには体力面を重視して選ぶ配慮が必要であろう。山頂でのバードウォッチングでは鳥はなかなか見つからなかった。大勢の子供が来たために、鳥が驚いてしまい姿を隠してしまったのではなかろうか。
 夕食後の「スタンツ」(体育館で集団で子供を遊ばせる)では、学生達の元気なリーダーぶりが堪能できた。そのあとで行われた反省会では、少年自然の家の職員から「スタンツ」で取り上げた遊びについての説明があり、私も興味深く聞かせていただいた。子供達は香川県内の各地から集まってくるためその日が初対面なので、お互いの気持ちの壁を徐々に低くすることを考慮して種目とその順番を決めているとのことであった。将来、学生が小学校の教員になった場合には、学校行事などで必要になることなのでよい経験になったと思う。私自身はこのような活動を指導する力量は持たないが、学生からは教えて欲しいという要求はあるように思う。ただ我々が付け焼き刃でこのような活動の指導を行うのは個人的には反対である。手慣れた人がやる方がよいと思うからである。それゆえ、このフレンドシップ事業の持つ役割は大きいと思う。
 翌日のうどん作りは、粉を練るところから始めた。足でこねるときは体重の重い子供が大活躍であった。そのうちおんぶをしてこねる光景が目立ってきて、生地をこねているのか、おんぶして遊んでいるのかわからない状態になってきた。野菜を切るときには学生が指導していたが、ごぼう、人参、大根を同じ大きさに切っているのには参った。最近の学生はあまり料理はしないようである。同時進行で行われた「焼き板」作りが始まると子供はそちらに夢中になってしまってはいたが、各班とも自作のおいしい「うどん」を食べられたのでよかったと思う。
 参加した学生の6割を知っていたため、ふだんの講義との比較ができた。大学で受講しているときよりもはるかに活気が感じられた。講義がつまらないということかもしれず、今後はどうやって講義に引きつけようかという反省をするとともに、一方では、何事にも受け身に見える学生に対してもっと積極的に関わって欲しいと願ったりもした。
 学生は、少年自然の家の職員の方たちに用意していただいたメニュー通りに作業をこなして成功したことに満足するだけではなく、メニューの裏にある根本的な考え方を知ろうとする意欲を持つことが、別の場面でどのようなメニューを作るかという応用力の修得につながることだと思う。
 
 


【教育実践集中講座 報告】
 
 今、学校で教師が取り組まねばならない様々な問題への実践的な対応の在り方を具体的な問題に限って検討し、教師としての役割・昨日について集中的に考えることを目的に、阪根健二先生(客員教授)による「生徒指導への対応の在り方−生徒指導の実践のノウハウ−」が下記のような日程で開講されました。

  日  時

      講  義  内  容

2月21日(月)
 10:00〜12:00

1 今、学校現場は(生徒指導の現状)
  ・学校現場の現状把握と今後求められる教師像など

2月24日(木)
 15:00〜17:00

2 暴力、いじめを繰り返す生徒の対応
  ・その心的メカニズムと教師の対応の実際など

2月26日(土)
 10:00〜12:00

3 昨今の生徒指導の諸問題の対応
 ・生徒指導等事件の概要とその舞台裏など

2月28日(月)
 10:00〜12:00

4 指導に従わない生徒の対応
 ・「学級崩壊」、教師の指導と生徒の関係など

3月1日(水)
 15:00〜17:00

5 女子生徒との心と行動
  ・青春前期の女子生徒の心理、性的な問題への対応など

3月2日(木)
 15:00〜17:00

6 不登校・学校不信への対応
 ・不登校の心的メカニズムの一例、再登校に至った実践例

3月4日(土)
 10:00〜12:00
 

7 これから教師を目指すために
 ・教育実習での生徒指導、体罰、セクハラ防止など
 
 2回目の講義を終えた時点で受講者から以下のような感想が寄せられました。
阪根先生のお話は、理論と実践が結びついているところに大きな魅力を感じます。また 先生のお話の中には本当に子どもに対する愛情が感じられ、聞いているとあたたかい気 持ちになれるから不思議です。(大学院修士課程1年生)
(校内暴力やいじめなど児童生徒の問題に対応する際大切なことは)壁にぶつかる覚悟 を先生自身が持っているかどうかということではないかと思いました。(学部3年生)
・前回と今回の講義を受けて、こんなにためになる授業は他にはないのではないかと思う くらいに衝撃を受けました。実例をとりあげて、その問題解決の方法を考えるという機 会が与えられて本当に良かったと思います。(学部3年生)
問題行動を示した生徒の事例について、なぜその生徒はそういった行動を示したのか、 問題行動の背景にはどのようなことがあるのかを今回の講義で考えさせていただきまし 人間関係は複雑であり、いじめる側といじめられる側といった小さな「ワク」の中だけ で問題解決の方法を探しているのでは足りない、もっと広い「ワク」の中で考えなけれ ばいけないと思いました。(学部3年生)
 
 この講座の内容については、講義ノートを『実践 生徒指導』(仮題)として発行する予定です。なお、来年度以降もこうした企画を予定しておりますので、学生への周知等よろしくお願いいたします。
 


【第2回センター研究会 報告】
 
 第2回センター研究会が、昨年末の12月22日(水)に開催され、今春ご退官される中川益夫先生にご発表いただきました。先生は、教師教育にも強いご関心があり、「初等教育研究」を初め、これまで実践センターの事業にもお力添えいただいておりました。
 ご発表は、大学教育実践家としての先生の情熱と知恵と技に満ちており、私たちは多くのことを学ぶことが出来ました。そのときのエッセンスを先生にまとめていただきました。
 
◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆
 
私の教育実践
−毎回の授業に臨む心構えなど−
                             中川 益夫(理科教育)
 
(ヒステリシス)教育系大学で学んだ私は、専門の物理学と同程度に教育にも関心がある。 大学院卒業後、21年間勤めた原子力岳(京都大学原子炉実験所)から教育岳(香川大学教育学部)に移り住んで12年余りにになるが、どちらの岳も前途多難の険しい岳・岳である。でも、どちらも複合学、総合学であることに意義を感じ、生きがいを見いだしてきた。
(プラクティス)私の教育(というより、授業)にむかう姿勢(というより、あるべき姿) として、次の8項目があると考えている。一つ一つを疎かにせず、行動原理と見なす。
 1)定刻主義 始業と終業の時刻を定刻の5分以内と決め、学生にも協力を要請する。
 2)最近の情勢に関するトピックスを導入部に入れる(ファラデー講演などに倣い)。
 3)本題に入る前に、必ず全体像を提示する(だから、遅刻は良くない)。
 4)あと一つ何か欠けていないかを問う。「初等教育研究」の経験から、一人一人の知恵  や経験を大切にする。
 4)知の枠組みを意識する。自然・社会・人文科学ないし各学部の観点・方法の違いなど。
 5)時間順序を追ってチェックしてみる。論理と接近の仕方(プロセス)を重視する。
 6)何が最も重要かを、必ず確認する。キイポイントがある筈と自他に言い聞かせる。
 7)観察・判断・操作(実践)の積み上げをひたむきに行っていく。
(サブスタンス)研究・教育の中味として、次の二つの柱を構築しようとしてきた。
 A)無機界、生物界、人間社会、言語界の類層構造(タテ構造)をしらべ、それぞれの  類層ごとに適用できる法則がある、という構想を敷衍する。
 B)類比によって理解をたすけ、創造にも役立てる(ヨコ構造)。
 教育の分野にもAとBの観点を取り入れ、教育内容・教育方法を改革していく(あくまで抱負であって、実現できたわけでも、出来つつあるわけでもない)。
 概略、以上の話を一時間余り行った。諸先生方には多忙の折、私の非力で、多数者の関心を呼ぶことができなかった。私と同程度の「教育実践無関心」でなければありがたい、とつくづく感じた。
 末尾ながら、講師として私に声を掛けて下さり、また聴衆として私を引き立ててくださった関係者に心から御礼申し上げる次第である。
 


《初等教育研究発表会−附属高松小学校 報告》       
                        平成12年2月9日(水)・10日(木) 
1 概要                                   
 平成12年2月9日(水)・10日(木)に,初等教育研究発表会を開催。午前と午後にそれぞれ授業を公開し、県外の総合学習実践校とのパネル討議(9日)、無籐隆先生の講演(10日)を実施、全国から延べ2500名程の参加者がありました。                    
2 研究主題とその解説                            
 研究主題:変化の時代を生きぬく豊かな自己を創造する教育
      〜共生と自己確立を目指す1活動2学習の教育課程〜
 本校の特色は、@本校の教育目標を保護者と共有、A分化と総合の視点で教育課程を編成したことです。まず、時代背景、子供の実態から「共生と自己確立」という教育目標(や子供像)を設定し、保護者との目的の共有化を目指すための取り組みをしました。また、その目的達成のために、新しい子供観(子供は、本来よくなろうとしている能動的な存在ととらえる)に立って、1活動(しらうめ活動:総合的学習に相当)2学習(ふれあい学習:道徳と特別活動を統合、教科学習)という教育課程を編成しました。                  
3 今年度の研究内容と成果                          
 特に、しらうめ活動では、個の興味・関心に応じて、自らが価値ある課題を見いだし、追究していけるための具体的支援の在り方。自分とは何か?自分はどんな人間なのか?といった自分探しにつながる評価の在り方を検討しました。               ふれあい学習では、認識と行動が統一するために、常時活動と行事的活動との関連を踏まえた年間計画を作成していきながら、行事の精選と重点化を図りました。       教科学習では、人間性と問題解決能力の育成を目指し、特に教科内容と共に、自他の理
解も含めた認知構造の変容を図るための支援を検討しました。           
4 今後の研究課題                              
 各領域の関連を図りながら、全人的な子供の成長につながるための支援と評価の在り方
について、今後も研究を進めていきたいと思っています。             
 この場をお借りして、関係の先生方へのご協力に感謝申し上げます。 <文責 倉沢>
                                       


《初等教育研究発表会−附属幼稚園高松園舎 報告》     
                             平成12年2月10日(木) 
 2月10日(木)附属高松小学校と共催で初等教育研究発表会を行いました。今年度は1日のみの開催でしたからコンパクトな研究会になりました。             一昨年度から、これまでの研究で明らかになった”幼児期にふさわしい生活”の中で育
まれる様々の発達の側面のうち、知的発達の側面にスポットを当て、知的発達を促す教育
の在り方を明らかにしていきたいと考えて、テーマを「幼児期にふさわしい生活の中で−
身体ぐるみのかしこさを育てる−」と設定しました。私たちは幼児期の発達の中心課題は子どもの自我の発達にあるという認識に立っています。知的発達を促す教育の在り方を問う際にも、それを自我の発達との関係を中心に捉えて、「人とのかかわり(平成9年度)」「子どもとことば(平成10年度)」等の分野から子どもの姿を見てきましたが、今年度は、「自然から子どもは何を学ぶか」について考えてみました。因に、次年度は「身の回りの社会を知ること」について問うてみたいと思っています。
 子どもたちは、自然と触れ合うことで感じる心(主観的な心の働き)を培い、そのことを礎に認識・思考(客観性を持った心の働き)を育てていきます。そして、技術や技能を会得していきます。自然は子どもたちに決して媚びることはしませんが、子どもの多様なかかわり方を受け入れるだけの懐の深さや広さを持っています。とはいえ、かしこさを培うには子どもと自然の意味ある出会いを作る教師の配慮が欠かせません。
 当日の公開保育は、早春の気配を感じながら子どもと私たちの織り成すごく日常的な保育のなかで、随所に子どもの成長が垣間見える一日を展開したいと思いました。そして、子どもたちが、具体的にどのように自然と応答しながら生活しているのかについて、その在りようを参会者に伝えていきたいとも考えました。
 保育討議でいただいたいろいろなご意見をもう一度吟味しながら、私たちの実践と、その過程に潜在する理論(筋道といった方が適切か)を見直してみたいと期しています。
<文責 宮武・藤澤>


《附属養護学校研究発表会 報告》
                            平成12年2月4日(金)
 テーマが「確かな社会参加につなげるためには」ということで、児童・生徒の将来と現時点での社会参加のあり方について、熱い討議が4分科会で繰りげられた。
1 連携部会では、具体的な事例をもとに、関係機関がどのように関わるかという発表を し、参加者から質問をうけた。時間不足で十分な討議はできなかったが、養護学校教育 の場に、保護者・関係機関・一般校の先生等様々な立場の人々が一同に集まり、連携に ついて話し合った意義というのは、非常に大きいものと考える。今後は、より一層連携 の必要性を関係者が認識し、在学中から卒業後にわたっての援助はどうあるべきかを考 えていく一つの契機となったと考える。
2 仕事T部会の発表は児童生徒の経験の幅を広げる大切さと、電話という一つの行動に 絞ってのスキルの定着をねらったものだった。生活年齢の小さいうちだからこそ周囲の 人や環境に自分から働きかけようとする力が養えるような気がする。自分の活躍する場 を積極的に設けていく必要があると感じた。お手伝いを進めるにあたっての意欲化につ いてと、人との関わりについて質問がでた。児童・生徒を取り巻く環境、そして一人一 人に応じた発達の課題を分析していく必要性を感じた。
3 仕事U部会では、作業に必要なスキルや就業という、より直接的な社会参加を果たす 上で必要な技術・挨拶・質問・報告等、職場の人とのコミュニケーションに関すること、 また、本人が意欲を持って活動できる為の手だてなどを発表した。高等部の現場実習の 事例についての質問があり、生徒の実状に合った職場開拓への取り組みについてや、職 場との連携について関心を持たれている方も多くいた。また、卒業後の家庭と職場との 連携の取り方も話題となった。研究会を通して、生徒たちを取り巻く環境に対して、積 極的に関わる中で自分たちの役割を見つけ、社会へとつながっていくことが大切である と感じた。
4 今回の研究大会では「仕事」とともに「余暇」についても取り上げた。授業は、小学 部「お気に入りのおやつ作りにちょうせんしよう」中学部「たくさんの人たちと交流し よう」高等部「買い物にいこう」が発表された。参加者からの反応もよく、時間外にも いろいろな質問がきていた。分科会討議で特に印象に残ったのは「学校が余暇を取り上 げることで、学校のあり方が変わる」ということばだ。つまり、学校は「知 識・技能を身につける」場だったのが、余暇を取り上げることで「生活 の楽しみ方」をも知る場所になりうるということだ。余暇は家庭生活と多くの部分で重なり合う。このことから、今後学校と家庭の連携、家庭同士の連携を図っていくことで、より余暇を充実していくことができるのではないかと感じた。                <文責 森近>
 


  【寄贈図書一覧(00/1〜3)】  
 
WAGニュース 第9・11号                    WAG研究所
センター報 第11号             埼玉大学教育実践研究指導センター
日本教育方法学会会報 第44号                日本教育方法学会
海外子女教育センター研究紀要 第10集    東京学芸大学海外子女教育センター
平成11年度在外教育施設における指導実践記録 第22集     〃
教育実践研究指導センターニュース 第9号  鹿児島大学教育実践研究指導センター
教育実践研究紀要 第9巻                  〃  
教育実践研究紀要 第37号、 しのぶそう 8     福島大学教育実践総合センター
教育実践研究指導センター紀要 第15号  横浜国立大学教育実践研究指導センター
学校教育研究 Vol.10                       学校教育学会
学校教育学研究 第11巻           兵庫教育大学学校教育研究センター
学校教育研究センター年報 平成10年度版、修士論文概要データベース(平成9年度版) 〃
学校教育研究センターニュース 53      上越教育大学学校教育研究センター
実践センターニュース 第24号      奈良教育大学教育実践研究指導センター
所報 第11号                     長野県総合教育センター
福井大学教育実践研究 第24号        福井大学教育実践研究指導センター
 


  【センター活動日誌&報告(00/1〜3)】  
 
12月22日(水) センター研究会、センター忘年会
1 月 7 日(金) 第10回企画推進委員会
           1)研究報告委員会規程について
           2)リーフレットについて
1 月24日(月) 附属高松小学校共同授業研究プロジェクト
1 月26日(水) フレンドシップ実施委員会
           1)平成11年度後半事業の実施計画
           2)平成11年度事業費の執行について
3)平成11年度事業報告について
4)平成12年度事業計画について
1 月29日(土) フレンドシップ事業事前研修会 (詳しくは1〜3頁を)
2 月 4 日(金) 附属養護学校研究発表会 (詳しくは8頁を)
2 月 9 日(土)・10日(日)初等教育研究発表会 (詳しくは6・7頁を)
2 月14日(月) 第56回国立大学教育実践研究関連センター協議会(東京学芸大学)
   センター協議会の冒頭では、センター協議会会長の開会のあいさつ、文部省教育大学室長の来賓あいさつ、東京学芸大学学長の会場校あいさつがありました。教員就職率の落ち込み、学生定員の削減といった教育学部をとりまく厳しい現状や独立行政法人化の問題などが談話の中で語られました。文部省教育大学室長は、教育実践総合センターへの改組を予定する大学にふれた際に、「(例えばいじめや不登校に対して、センターで)座して待つのではなく(もっと積極的な対応をする)」といった話をされました。談話を通じて教育学部をとりまく現状の厳しさを改めて認識するとともに、「座して待つのではない」という言葉が強く印象に残りました。その後は、センター改組の現状報告、研究プロジェクトの報告等がありました。(宮前記)
2 月17日(木) 附属坂出小学校共同授業研究プロジェクト
2 月21日(月) フレンドシップ事業事後交流会
2 月28日(月) フレンドシップ事業シンポジウム
3 月 6 日(月) 第1回教育実践研究編集会議
          第11回企画推進委員会
1)研究プロジェクトについて
2)センター予算の執行について
 


【センター研究プロジェクトの活動紹介 -2-】
 
マルチメディアの総合的学習への利用に関する研究プロジェクト>
1. 研究プロジェクトの概要
 平成11年12月に文部省から公示された小・中学校の学習指導要領では、各教科内容の大幅な削減、総合的な学習の時間(以下、総合的学習)の新設、及び情報教育などの学習指導内容の充実が図られるようになりました。これら改訂の指針を受けて、小・中学校からは各教科や総合的学習などで利用できる良質のマルチメディア教材や、簡便な方法でインターネットのWebページを検索できるソフト開発などの希望が寄せられています。そこで、この研究プロジェクトでは、これらの要望に応える情報教育や総合的学習などに利用できる学習教材や学習ツールの開発に向けて取り組んできました。
2. 本年度の研究内容と次年度計画
 これまでの研究内容と方法を箇条書きすると、以下のようになります。
(1)社会科、理科、技術科、情報教育、総合的学習の中での児童生徒の学習活動や学習過 程を想定したうえで、インターネットのWebページから学習素材となるURLを抽出し ました。
(2)学習素材として抽出したWebページを活用した各教科、情報教育、総合的学習等の授 業モデルを設計し、学習指導案を作成しました。
(3)抽出したWebページを用いた学習を試行して、各Webページの良否を検討すると共に 今後のページ制作の条件を見直しました。
 次年度以降は、教育現場でニーズの高い総合的学習のための学習素材データベース作りへ移行していきたいと思っています。                (文責 松下)
 
<子ども文化研究プロジェクト>
 学校だけでは把握しきれない、子どもの社会生活・家庭生活・サブカルチャーを調べ、そこから今の子どもたちの人生観・世界観をとらえていくということを目指して、本研究プロジェクトを行っています。
 昨年10月30日の第1回目の研究会では、子ども文化研究の先行研究について佐藤が紹介し、一口に子ども文化といっても様々な研究者がおり、その定義も多様であることと、伝承遊びだけを「子ども文化」とする考え方から、ポケモンのようなマスコミに扇動された流行も「子ども文化」ととらえる考え方があることなどを述べました。そしてどの範囲の研究を目指していくかという研究の方向性について話し合いました。プロジェクト募集の時点では子ども文化を取り入れた授業研究を考えていましたが、そのことは置いておいて、目標とは考えず、まずは、「子ども文化」についての調査研究を行うということで合意しました。例えば、なぜ子どもはポケモンにひかれるのか。その背景にある文化構造を調べるとか、教材化ではなく教材になる手前の文化について調べるとか、中学生はプレステ、シーマン、スマップ、スピードなどが好きであるがそういう文化はどのように広められたのか、文化の空間的な伝承のプロセスを調査する、などたくさんの調査対象についての意見交流がなされました。
 そこでまず当面の計画として、2つの調査項目についてのアンケートをとることにしました。調査1は遊びについて、調査2は、好きなもの・ことについて(遊び以外のものキャラクターやアニメや音楽など)について調べることに決まりました。各学校各学年それぞれ1クラスずつアンケートをとって、1月7日にその結果を持ち寄ることとしました。このアンケートは各附属校でそれぞれ昨年度末に実施しました。
 1月7日の2回目の研究会では、そのアンケート項目の書き出し集計作業に一日を費やしました。そして現在は、現在はそこで得られた膨大なデーターを有馬先生が作成してくれたデーターベースのプログラムに西岡と佐藤で入力している段階です。
 今後は、このデーターを整理した後に、附属教官とともに話し合い、分析・考察を進め、さらに実際の教育現場のフィールド調査も取り入れながら研究を深めていきたいと考えています。                              (文責 佐藤)
 
<学習困難児等への教育支援研究プロジェクト>
 学習障害(LD)や注意欠陥/多動性障害(AD/HD)を持つ子どもたちに対しては、教育と医療の連携を深めて、保護者や担任を加えた治療・教育チームを作り、対象児の治療教育を行うという方式が最も効果あるものとされていますが、県下では、医療機関や教育相談機関は、対象児への治療・教育にあたり、個々には優れた治療・教育機能を持ちながらも、教育現場や保護者との十分な連携ができているとはいえません。そこで、教員養成学部が持つ豊富な人的資源を、教育現場でのこのような学習困難児の治療教育のシステム作りに役立てられれば、ということを目的としてこのプロジェクトは組織されています。
 今年度の活動として、高松・坂出両市の全59小学校校長に対して、本研究の主旨を伝えるとともに小学1、2年生の実態調査および支援活動の要望についてアンケート調査を行いました。このアンケート調査の結果については、『教育実践総合研究』に報告する予定です。現在、校長アンケートの結果に基づいて、支援活動を受け入れ可能な小学校を実際に訪問し、来年度の活動に向けての具体的な話し合いをしている段階です。これと平行して、細々とではありますが、数名の学部学生がスクールボランティアの形で小学校で活躍してくれており、現場校からも高い評価を得ております。本プロジェクトが軌道に乗り始めますと、どうしても先生方や学生の皆さんのご協力が必要となります。よろしくお願いいたします。                           (文責 繪内)
 
<附属学校・園の現教に参加するプロジェクト>
 研究プロジェクト以外に、センター企画推進委員が行っているプロジェクトとして、附属学校・園の現職研修の場に、学部教官を組織して参加するというものがあります。佐藤明宏先生(国語教育)を中心に、附属学校・園と連絡を取りつつ実施しております。今年度は、1月に附属高松小学校、2月に附属坂出小学校で授業研究を行いました。
 このプロジェクトは、学部教官が教科の壁を取り去って参加し、1つの授業を対象に学部教官と附属学校・園教官とが対等に議論しあうことで、学部と附属との組織的な共同研究の先駆けとなることを目指しています。今後もこのプロジェクトが発展するよう、皆様のご協力をお願い申し上げます。
【「教育実践総合研究」投稿原稿受付中!】
 
 3月6日に開催された教育実践総合研究編集会議において、次のような投稿要領が決定されました。すでに教授会で紹介されましたように、今年度は3月31日を締め切りにして投稿を受け付けております。記念すべき創刊号に、皆様の玉稿を是非ともお寄せ下さい。
 日頃、総合センターと共同研究されている附属学校園などの先生方も投稿できますので、積極的にご投稿下さい(必要であれば、センタースタッフがご相談にのります!)。
 なお、投稿予定者は、あらかじめ総合センター事務室までご連絡下さい。
 


香川大学教育実践総合研究投稿要領
 
1(投稿の要領)
  香川大学教育実践総合研究(以下「総合研究」という。)への投稿については、「香川大学教育学部研究報告規程」による他、この要領の定めるところによる。
2(投稿の内容)
  総合研究は、教科教育、教育臨床など広く教育実践に関する独創的な研究論文・実践報告、資料(研究ノート、研究動向の紹介など)及び本学部附属教育実践総合センターの活動報告などを掲載する。
3(投稿者)
  総合研究に投稿できる者は、「香川大学教育学部研究報告規程」による他、香川大学教育実践総合研究編集会議(以下、「編集会議」という。)が特に依頼した者とする。 
4(投稿原稿の取り扱い)
  投稿された論文等は、編集会議において査読を行い、その取り扱いを次のいずれかに決定する。 
  (1) 採録                           
  (2) 条件つき採録                       
  (3) 返戻                           
5(投稿原稿の長さ)   
  投稿原稿の長さは、刷り上がり14頁(1頁は21字×42行×2段)以内を原則とし、偶数頁になることが望ましい。超過する場合は、編集会議の議を経て認めることがある。 
6(刷り上がり1頁目の形式)
  刷り上がり1頁目は、和・英文のタイトル・著作名・所属(住所を含む。)、和文要旨(200字)及びキーワード(5語)を含むものとする。            
7(投稿原稿の提出方法)
  投稿原稿は、原則としてワープロで作成し、ワープロ打ち出し原稿2部と、テキストデータで登録したフロッピーディスクを編集会議に提出する。
8(投稿原稿の校正)
  投稿原稿は完成原稿とし、著者校正は初校のみとする。その際、印刷上の誤り以外の訂正、挿入、削除は原則として認めない。