No. 12                        平成14年3月27日発行   

◆特集 センター公開講演会
◆センター協議会報告
◆センター講座報告
◆附属高松小研究発表大会
◆寄贈図書・活動報告
◆センターからのお知らせ
特 集 第2回 センター公開講演会報告
 
 本教育実践総合センターでは、教員と大学院生を対象に、今日の学校教育において課題とされている教育実践、教育臨床に関する公開講演会を実施しております。昨年度は「いじめや不登校などへの対応について」という演題で教育臨床に関する講演を実施し、今年度は下記のような趣旨で、教育実践に関する講演会を実施しました。
「小学校・中学校では来年度から、高等学校では平成15年度から実施される新教育課程において新たに設けられた『総合的な学習の時間』に関しては、これまで各学校において試行されてきておられますが、実施上様々な問題や悩みを抱えておられるのではないでしょうか。そこで、総合的な学習の時間の本格実施に向けてどのように取り組むか現場の先生方と共に考えてみる機会として講演会を実施いたします。」
 
具体的には下記の要領で、ご講演を実施しました。
 日 時:平成14年2月9日(土)14:00〜16:30
 場 所:香川大学教育学部611講義室
 講 師:茨城大学教育学部助教授 藤井千春先生
 演 題:「総合的学習で育てる子どもの学力」
 
 藤井千春先生は、総合的学習にご造詣が深く、いくつもの学校と協力して、実践的研究をすすめてこられております。ご講演では下記のようなお話をいただきました。 
総合的学習で子どもたちの「前向きな生活の構え」を育てることが、各教科での学力の育成のための基盤となり、また、地域を動いて地域の人々とかかわり合う活動により、心の教育が実現するということ。つまり総合的学習から各教科や子どもたちの生活へ、さらには地域と一体となった学校づくりなどとつなげていくという発想が求められているということ。そのような総合的学習のカリキュラムづくりの視点、子どもたちへの指導・支援のポイントについてお話しされました。

 例えば、総合学習で子どもを育てることが各教科の学力の充実につながるとして、各教科の基礎学力を充実していくために3つのことをあげられました。

 1 豊かな体験
 2 学級の中の子どもたちの暖かい仲間意識
 3 教師への信頼感

 ここでも、例えば、2についてそれがそのクラスに育っているかどうかを判断するために、苦手な子どもが卑屈になっていないか、安心して自分が努力している姿を表現できるか、体育などの授業をみるとよくわかるということなど、具体的な視点をあげて説明されました。
 また、総合学習の指導支援のポイントとして以下のことを述べられました。

 1 (あたかも)自分たちの力で学習活動を進めている意識を持たせる 
 2 支援とはうまく子どもたちを困らせること
 3 なにかをやり遂げるという形で課題を設定する 
 4 いい大人との出会い・かかわり
 5 課題づくりや追究で行き詰まっている子どもへの支援

 例えば、5について、行き詰っているその子のやっていることの延長上でその子の力でやり遂げられる課題を教師は用意してやること、つまり、「自分も結構いいことやり遂げられたな」と思えるような、自分を主人公とした学びの物語を編んでいき、自分の成長・有能感を感じ取れるような支援をすることが大切であることを述べられました。

 講演後参加された先生方と非常に熱のこもった質疑応答が展開されました。また、終了後のアンケートでは9割を超える参加者の方に講演について大変満足・満足であるという評価と、次のような感想をいただきました。
・具体例をあげていただき、総合学習で育てる子どもの学力が理解できた。
・総合的な学習の時間の持つ重要性がよく理解できた、子どもたちが、必然的に課題
を追究していけるような支援が大切であることを痛感した。
・具体的な例をあげてお話くださり、普段の授業を想定しながら聞くことができた。
総合的学習と教科、心の教育、地域学習とのかかわりがとてもよく分かった。
・「いい大人との出会いは、大人になることへの夢を育てる」いい言葉をもらった。
総合学習で実践していきたい。
・総合学習の教育課程の位置づけ、核であることが再確認できた。指導する側の教育に対する想像力が大切であることがよく分かった。
・次年度より週5日制が始まり、ウイークデイは今以上に忙しさが増すため、休日と
なる土曜日にこのような行事があることは大変よい。公務という感じではなく、自主
研修という目的でこのような講演会を受け止めたい。

 以上のように、今回の講演会も参加者の先生方のご好評を得ることができました。今後実施してほしい講演会のテーマとして、総合的学習とともに、「授業づくり」、「LD及びその周辺児」、「社会的スキル訓練」などへの要望が多くあげられていました。その他いただいたご意見をもとにして、来年度の公開講演会をさらに充実したものにしていきたいと考えております。

第60回 国立大学大学教育実践研究関連センター協議会 報告

 平成14年2月12日(火)に東京学芸大学を会場校として、標記協議会総会が当大学総合メディア教育館にて下記の要領で実施されました。本教育実践総合センターからは、湯浅センター長と松下、七篠、田上、宮前の専任教官4名全員が参加しました。

開 会 開会のあいさつ 近藤 勲 国立大学教育実践研究センター協議会会長
    来賓あいさつ  石井 稔 文部科学省高等教育局専門教育課教育大学室長
    会場校あいさつ 岡本靖正 東京学芸大学学長
報 告 前回議事要旨の確認(事務局)
    「2002年度アジア・太平洋教育工学東京セミナー/ワークショップ」について(国    際協力担当幹事)
質 疑 平成13年度決算中間報告および平成14年度予算案
討論1 本センター協議会運営のあり方
討論2 在り方懇答申を受けての各教員養成大学学部の現状とセンターの将来計画事業プ    ロジェクト報告
(1)部門プロジェクト 1 教育臨床部門
            2 教育実践・教師教育部門
            3 教育工学・情報教育部門 
(2)遠隔教育特別プロジェクト
(3)情報教育特別研究プロジェクト

 開会の来賓あいさつの中で文部科学省の石井教育大学室長は、教員養成大学・学部再編へ向けた枠組みや現状とともに、それに伴うセンターの位置づけの問題について触れられました。
 また、討論については、討論1で、センター協議会の開催方法と年報について、討論2の中で、来年度から総合センターとして改組されるセンター(横浜国立大学・高知大学・宮崎大学・鹿児島大学・佐賀大学)からの挨拶・報告と、教員養成大学・学部の再編統合に関する情報交換ならびに、それにも関連した各センターの取り組みや現状についての報告がなされました。
 教員養成大学・学部の再編統合に関しては、どちらもまだはっきりとした方向性を見出すことができていないようですが、各センターの取り組みに関しては、例えば、兵庫教育大学では、3部門7分野へ改組し、専任教官9名・兼任教官7名・協力教官14名に増員する等、いくつかのセンターから兼任教官や協力教官、客員教員の大幅な増員を図っていることなども報告され、多くのセンターが附属学校園や地域との連携についての取り組みとその重要性について言及されました。
 事業プロジェクト報告では、部門プロジェクトでそれぞれの計画・実施されている取り組みについて、遠隔教育特別プロジェクトでは、平成14年度のSCSを利用した講義(教育工学特講・教育臨床)の実施計画について、情報教育特別研究プロジェクトでは、「小中学校の情報教育カリキュラム」、「教員養成における情報教育」「教育情報化推進リーダーを育成するための現職教員研修」、「教育実習の情報化」、「学校図書館司書教諭の情報化」、「高等学校教科『情報』に関する教員研修・教員養成」の計7本のプロジェクト計画について報告がなされました。
 香川大学教育学部と本センターのこれからの方向性や在り方についてもいろいろな視点から考えさせれる総会でした。次回61回大会は、上越教育大学を会場校として11月5日(金)に開催される予定です。 

第2回 センター講座 報告
 
 平成13年度、2回目のセンター公開講座を、3月2日に開催しました。
 今回は、香川大学教育学部客員教授 阪根健二先生に「フランスの生徒指導と日本の生徒指導」というテーマでお話しをいただきました。
 阪根先生は、今年1月、香川県教育委員会事業「教職員自主企画海外派遣研修」でフランスを訪問されました。その研修の一端は四国新聞にも4回に亘って連載されましたが、その研修を踏まえて今回の講座を実施していただきました。
 下記にお話しされた内容の項目をあげますが、これを見ていただければわかるように、標記のテーマに加えて、フランスそのものへの理解を深める幅広い内容のお話しをいただきました。
1 フランスとは(・ユーロ時代への突入/・多国籍な国/・フランスの文明背景)
2 フランスの教育行政(・教育制度/・ポリシー)
3 フランスの生徒指導(・視察報告から/・課題と問題点)
4 日本と比較と今後の在り方(・似て非なりの教育/・これからの日本の在り方への私見)
5 これらからフランスに行かれる方へ(・生きる力とは/・旅行へのアドバイス/・今、フランスは面白い)
 さて、フランスでは、未成年者による犯罪が増加、近年特に、都市部における暴力事件が急増しているということです。このような社会状況の中、学校教育においては、1990年頃から校内暴力が顕現化し、94年から96年に爆発的に増加したことを受け、いろいろな新しい対策が講じられるようになりました。それらの対策の集大成として、2000年に「校内暴力対策国立委員会」が発足されました。これは、学校と警察・裁判所がパートナーシップをもち、すべての人々が暴力に戦うという趣旨で設立されたものです。
 講座では、充実した資料をご用意いただき、このようなフランスの学校内問題行動の現状とその対策について、学校関係者からの聞き取りを交え、また、お話ししていただきました。
 参加者からは次のような感想をいただきました。
 
・フランスの教育から日本の教育を見るという視点で考える機会を持てた。
・これからの教育で大切なことは違いから学ぶ、違ったことを吸収していく、学んでいこうとする柔軟性だと思う。多角的に物事を見ることができるようになれば、自分たちのよさや素晴らしさ、特徴なども分かるようになると思う。
・親教育の重要性、学校、学校区を含めた教育の
 意義を再確認する必要性を感じた。子どもの未 来のための教育とは、具体的にどうあるべきな のかを考えたい。
・研究機関ではたくさん、いいもの、新しい物が
 研究されていても、現場はやっぱり「学校」。
 講演という一時的なものでなく、継続的な交流、
 相互研究が必要だと思った。システム化するべ
 きだと思う。
・諸外国の教育事情についての話を聞けるのは
 非常に興味深い。次回は授業カリキュラムに
 視点をあてて話をきいてみたいと感じた。

 












附属高松小学校研究発表会 報告
 
                            文責 日 下 哲 也
 
1 研究会の概要
 
 香川大学教育学部附属高松小学校,附属幼稚園高松園舎において,平成14年2月7日(木),8日(金)の両日,全国から延べ約2600名の参会者を得て,教育委員会や香川大学のご援助,ご協力をいただき平成13年度初等教育研究発表会を行った。以下はその主な内容である。
○ しらうめ活動,ふれあい学習,教科学習の授業公開(授業数 39)と分科会(分科会数 19)
○ パネル討議 京都ノートルダム女子大学教授 加藤 明先生 他
○ 講演  千葉大学教育学部教授  天 笠  茂 先生
 
2 今年度の研究内容
 
 本校においては,昭和57年度から実践している総合学習「しらうめ活動」と,道徳・特別活動を統合した「ふれあい学習」,そして人間性の育成を重視した「教科学習」という1活動2学習で教育課程を編成し,これまで一貫して子供の学びを中心に掲げ,研究実践に取り組んできた。
 今年度は,これまでの取り組みを新たに「才能の伸長」の視点から見直し,平成17年度までの「教育研究の中期構想」を策定した。この構想の中では,自らの才能を開花し,未来社会に夢や希望を持ち,人間としてよりよい生き方を求めて,たくましく創造的に自己実現に取り組む子供こそ,21世紀に求められる子供像であると捉えている。
 今年度の研究会では,一人一人の才能を伸ばし,創造性に富む人間づくりを目指し,各教科の学習においては基礎・基本を洗い出し,少人数指導を取り入れ,基礎・基本の徹底を図るとともに一人一人の能力・特性を生かした発展的な学習も取り入れるなどして授業改善に努めた。また,ふれあい学習では,子供が楽しみと潤いを感じながら社会性を育成する「わんぱくの時間」の創設を,「Newしらうめ活動」では,本物体験を取り入れ子供の課題設定の力や課題解決の力をより確かなものにする展開を公開し,学校のカリキュラムを「才能の伸長」の視点から改善した教育課程を提案した。
 
3 今後の研究課題
 
 本研究の基盤となる各教科の「基礎・基本」を学部にご指導もいただきながら解明していきたい。また,研究の主軸である「才能の伸長」について,子供の発達と併せてカリキュラムの開発を行っていきたい。 
 


  【寄贈図書一覧 (02/2〜02/3)】  

ニュースレター 第5号   メディア教育開発センター
特定領域研究A「高等教育改革とメディア」   メディア教育開発センター
教育実践総合センターニュース bR 宇都宮大学教育実践総合センター
教育実践総合センター概要   福島大学教育実践総合センター
教育実践研究 第16号   高知大学教育実践研究指導センター
教育実践研究 第26号   福井大学教育実践総合センター
NEWSLETTER 第2号   福井大学教育実践総合センター
教育実践総合センター紀要 第2号   北海道教育大学教育実践総合センター
平成13年度フレンドシップ事業報告書   上越教育大学学校教育総合研究センター
平成13年度フレンドシップ事業「学びのひろば」活動報告書
                         上越教育大学学校教育総合研究センター
教育実践総合センター紀要 第2巻    岡山大学教育実践総合センター


  【センター活動報告 (02/2〜02/3)】  

 2月7・8日 │附属高松小学校研究発表会
 2月 9 日(土) │第2回センター公開講演会
 2月12日(火) │国立大学教育実践研究関連センター協議会
 2月14日(木) │教員養成モデル・カリキュラム研究開発プロジェクト
 2月27日(水) │第3回管理委員会
 3月 2 日(土) │第2回センター講座
 3月13日(水) │教員養成モデル・カリキュラム研究開発プロジェクト
 3月18日(月) │第4回管理委員会
 3月19日(火) │マルチメディア研究会
 3月20日(水) │第3回教育実践・臨床研究フォーラム
 3月25日(月) │教員養成モデル・カリキュラム研究開発プロジェクト

  【センターからのお知らせ】  

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│ 教育実践総合研究第5号原稿募集  │
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 『香川大学教育実践総合研究』第5号は、5月31日(金)原稿受付締め切りです。奮ってご投稿されるのをお待ちしております。
 なお、投稿予定者は、あらかじめセンター事務室までお申し込みください。

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│ 貸出物品・備品について   │
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 今年度、以下の物品を新たに購入しました。使用ご希望の方は事務室まで。
 ・デジタルビデオカメラ(SONY DCR−TRV50)
 ・ノートパソコン(NEC PC−LL750/2D)
 ・HDD&DVDビデオレコーダー(TOSHIBA RD−X1)
 ・DVD−R/RWライター(SONY DVR−S303)