「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発と実施状況に関する調査研究
平成14年度香川大学長裁量経費研究成果報告書
平成15(2003)年3月
報告書抜粋「はじめに」
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目 次
はじめに
T 調査の概要
(1) 調査目的
(2) 調査対象
(3) 調査方法
(4) 回収率
U 調査結果
(1) カリキュラムの作成について
1カリキュラム作成上の留意点
2 カリキュラム作成上の目的(身につけさせたい力)
3カリキュラム作成上のテーマ
4時間割編成上の位置づけ
(2)実施について
1 取り組んだ活動
2 学び方や調べ方の学習の位置づけ
3 指導援助の困難な場面
4 実施上の指導形態
5 保護者への周知方法
6 地域実態を活かした活動
(3)評価について
1 学習評価の方法
2 学習評価の観点
3 目的の達成度合い
4 計画と実践とのズレ
5 「総合的な学習の時間」実施による学校の変化
(4)問題点・課題と大学への期待・要望
1 問題点・課題
2 大学への期待・要望
V まとめと今後の課題
IV 資料:「問題点・課題」及び「大学への期待・要望」の自由記述回答
V質問票・回答票
はじめに
本報告書は、平成14年度の学長裁量経費による研究「総合的な学習と教育課程に関する
研究開発」(メインコーディネーター・田上哲教官)をまとめたものである。総合的学習に関
する香川県下の小・中学校の実施状況をできるだけ詳細に調査することが目的であり、この
種の調査としては多くの回答をいただくことができた。
平成14年度に小・中学校において「総合的学習の時間」が完全実施に移されたが、その前
後から学力低下論の大合唱が始まった。それとともに、総合学習は句を過ぎたもののよう
なイメージさえ受けてしまう傾向さえ見られるようになった。学ぶ側の知の在り方につい
ては、既に学習論において、Knowledgeと Knowingとして区別されてきた。それらを統一し
て形成し、子どもたちが何を課題として設定し、どのような知識と技でそれを探求するか、
総合的学習はそれを問い返す契機だったはずである。世界への関心と学ぶ知識や技のいず
れを欠いても現代を生きる子どものリテラシーとはならないからである。二者択一の議論
をどう克服するかが間われよう。
とりわけ中学校においては、進路という課題を前にして、新しい領域である総合的学習
をどう捉え、どうカリキュラムに据えるかは大きな、しかも困難さを伴う研究テーマのよ
うに思われる。しかし、総合的学習の導入は、既成の教科の問い直しを要請する。ここで
も教科か総合かという二者択一の議論を乗り越えることが必要ではなかろうか。教科にし
ろ総合にしろ、どのような学びを学校はカリキュラム化しうるのか、学校の役割を問い返
すところまで議論を掘り下げることが必要である。公共空間としての学校それ自体が危機
にある現在、進路等の状況をリアルに見つめれば見つめるほど、学校の学びとは何かを突
き詰めることが求められている。
今回の調査では、単に実施状況を整理するだけではなく、各学校において総合的な学習
がどのような視点で捉えられようとしているのかをていねいに分析することに心がけた。
多様な記述からは、今後、総合的学習を追求する貴重な意見を発見することができた。調
査する側も実は、「理想的な」総合的学習像を共有しているわけではない。子どもに必要な
学びとは何かをめぐってメンバーが相互に交流を深めた本研究の過程それ自体が、学びの
場でもあった(教育実践総合センター客員研究員の佐藤清二先生・松原千代子先生=香川
県教育センター=には、一貫してご助言いただき感謝申し上げます)。
わが国の教育実践史において、総合学習に関わる輝かしい成果はいくつも示されてきた。
しかし、総合学習についての本格的な研究はほとんどみられない。本調査を契機として、
理論的な研究を進めるとともに、浮き彫りにされた研究視点をめぐって意識的な追求を期
待したい。本調査が、これからの総合的学習のあり方を探る一助になれば幸いである。
最後に、年度末のご多忙の中、本調査に対して格段のご協力いただきました各学校の先
生方、並びに、本調査の実施にあたり貴重なご助言をいただきました香川県教育委員会義
務教育課 野村一夫先生、香川県小学校長会会長、溝渕正臣先生、同中学校長会会長 乙
武先洋一生に厚くお礼申し上げます。