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  4. <2015年度> 人の「やる気」を研究する     岡田 涼

人の「やる気」を研究する ・・・・・・・・・・・・・・・岡田 涼

私は人の「やる気」を研究しています。こんなことをと言うと、みなさんはどう思われるでしょうか。「やる気なんて個人差の問題なのに、研究できるの?」とか「やる気が出る出ないは、その時々で違うから研究しても仕方ないんじゃない」とかいう声が聞こえてきそうです。確かにその通りかもしれませんが、もう少し考えてみてもいいかもしれません。普段からやる気がある人とあまりない人がいますが、その違いはなぜ生じるのでしょうか?みなさんもやる気が出る時と出ない時があると思いますが、やる気が出る時(あるいは出ない時)ってどんな時でしょうか?そういったことについて、一般的な法則がわかったら面白いと思いませんか?

やる気の問題は、面白いだけでなく、実は色々なところで解決が求められてもいます。たとえば、みなさんが学校教育の中で何を学ぶべきかを定めている「学習指導要領」というものがあります。その中では、さまざまな知識や技能を身につけるだけでなく、自ら考える力や学習に取り組む意欲を育てることを重視しています。やる気をうまく支えるのは教育上の重要な課題です。

私が専門としている教育心理学では、人のやる気の問題を「動機づけ」という言葉で捉えて研究をしています(動機づけを英語で言うとモチベーションです)。その動機づけの特徴を示した理論に自己決定理論というものがあります。自己決定理論では、何かをする時に興味をもって自分から一生懸命取り組むようなやる気を大事にしています(これを「内発的動機づけ」と呼びます)。人がそのようなやる気をもつためには、「自律性」「有能感」「関係性」の3つが必要だとしています。自律性は、自分のことを自分で決められるという感覚です。有能感は、自分がうまくやれているという感覚です。そして、関係性は、他の人とよい関係を築けているという感覚です。つまり、自分で何をするかを決めて、少しずつ上達するのが実感でき、人とよい関係のなかで活動できている時、人はやる気になるということです。みなさんも、学校での勉強や部活の練習などで思い当たるところはありませんか?

動機づけの理論をもとにして、私はさまざまな場面でのやる気に関する調査研究を行っています。今は特に小学生の学習活動に対するやる気に注目しています。もう少し専門的な言い方をすると、「協同的な学習に対する動機づけ」という概念を提唱し、その特徴や影響要因を明らかにするために、縦断調査に取り組んでいます。研究の方法として、子どもたちに回答してもらったアンケートや授業観察で集めたデータに対して統計解析を行います。その結果をもとに、やる気の特徴に関する一般的な傾向や法則を導き出し、子どものやる気を支える教育環境や教師のかかわり方について考えていきます。客観的なデータをもとにして、人のやる気の仕組みについて少しずつ明らかにしていきたいと思っています。

 

岡田先生のプロフィール大学フォト内に掲載していますので、ご覧ください。

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香川大学メールマガジン  第198号   2015年5月25日