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  4. <2014年度> 大きな宇宙の、小さな塵の研究     松村 雅文

大きな宇宙の、小さな塵の研究・・・・・・・・・・・・・・・松村 雅文

(ある日ある時、教育学部の松村研究室にて)

学生Aさん:こんにちは。すみませんが、先生の研究について、お話を伺ってもよいですか?

松村(M):(時計を見ながら)この後、附属坂出小学校と附属幼稚園に行かなければいけないので、あまり時間が無いけれど、良いですよ。

A:専門は何ですか?

M:(少し面倒くさそうに)私の専門分野は、天文学です。文字では、"文学" と書きますが、実際に研究している内容を考えると、天体物理学というほうがその内容を表していると思います。

A:そうですか。で、その内容は?

M: 宇宙(星間空間)における固体の塵粒子(星間塵粒子)についての研究です。宇宙空間は、地球の大気に比べると、ガスや塵の密度は大変低く、ほとんど真空と言えるのですが、ガスや塵があるのですね。地球を含めて太陽系の天体は、そのようなガスや塵からできたので、塵の性質を知ることは、太陽系のような惑星系のでき方を知るのに重要です。

A:真空に近いのに、なぜ判るのですか?

M:(少し熱くしゃべり始める)密度は低くても、地球から星までの距離はとても大きいので、視線上にある塵の量は多く、遠方の恒星の光の色は影響を受けます。文字通り「塵も積もれば山になる」です。遠方(例えば数百光年とか)の星の光は、近くの星の光よりも赤っぽく観測されます。これは、夕日が赤く見えるのと同じです。塵のサイズや組成によりますが、一般に塵は青い光ほど、吸収・散乱します。このため、遠方の星の光には、赤い光が多く残り、結果として赤く見えます。

A:では、先生は遠い星の色を観測しているのですか?

M:昔はそのような研究もしていましたが、最近はしていません。

A:なぜですか?

M:夜は眠いから(笑)。半分は嘘です。私はどちらかというと、朝に弱い夜型人間です。実のところ、天文の研究と言っても色々あり、最近は、光の散乱の特性を理論的に計算する研究を行っています。

A:その理論的な計算って、どんな計算なのですか?

M:(目が輝き体を乗り出してくる)光は電磁波の一種なので、電場と磁場の波であると考えることができます。そこで、塵粒子の中と外とでの、これらの波を何らかの方法(通常は直交関数系で展開)で表し、塵の表面での境界条件を考えて、中と外の波をつなぐことができます。そうすると、塵によって入射してきた光がどうなるのか、厳密に表わすことができます。塵の形が球形なら比較的単純なのですが、複雑な形になると、とても難しくなります。でも、いかにきちんと計算するのか、また観測データ等と比較できるのかなどを考えて研究していくのは、とても面白いです。また、光(電磁波)は横波なので、偏光の特性があります。偏光は…

A:(ちょっとあわてて遮る)ありがとうございます。少しお話は難しくなりましたが、何となく先生の研究の様子が判ってきたように思います。私は、そろそろ、次の授業の時間ですし…

M: (やはりあわてて)あ、そうですね。私も、もう行かなければ電車に遅れてしまう… 今日は来てくれて、ありがとう。さようなら。

A:さようなら。

この会話は架空のものですが、研究内容は実際のものです。上に書いた内容の他にも、天文教育、久米通賢の天体観測資料の調査など、天文に関する色々な研究を行ってきました。

 

松村先生のプロフィール大学フォト内に掲載していますので、ご覧ください。

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香川大学メールマガジン  第191号   2014年10月27日