◆◇◆◇◆◇⇒《研究室遍路》
  「一緒に勤めたい」と感じる教員の養成を志として ・・・・・・・・山下 隆章
 
   「失礼します。○○研の○○です。」と、ドア越しに学生の声。
   本学と香川県教委との連携により公立中学校から交流教員として赴任している私
  の研究室には、教員をめざす学生が多く訪れてきます。来室の目的は、教員採用選
  考試験願書の添削、集団討論や面接の相談、試験結果の報告などです。願書は40
  人ほど、延べにすると100人以上指導したでしょうか。勤務時間の大半を学生の
  相談に費やす日もありました。〆切に追われている仕事があっても、一世一代の勝
  負に挑む彼らの想いを受けとめ、じっくりつきあうよう心掛けています。それは、
  決して 「学生が可愛いから」などといった感情だけではなく、私の教育信条による
  ものからです。

   軽輩の頃、校長から「君は自分に真面目すぎる。他人に真面目であるように。」
   と謎かけのような助言をいただきました。「どうして『自分に真面目』ではいけな
  いのか。」 と、当時は反駁する思いもありましたが、年数を重ねるにつれその意図
   を自分なりに消化できるようになりました。

   彼らが生涯の職場として身を置こうとする学校は、組織として個々の力を機能さ
   せることで成り立っています。自己の分掌を果たすだけでなく、マージナルな面を
   お互いが如何に埋め合っていくかで学校運営の成否が左右されることは、これまで
   の教職経験のなかで身をもって思い知らされてきたところです。一言で言えば「支
   え合う」となるのですが、余力を宛がうことではなく自分のことを差し置いてでも
   関わり合っていこうとする、「あれこれ仕事もあるくせに自分のことは後にする」
  という河島英五の「時代おくれ」の歌詞のような姿勢が、職場の人間関係を強固な
   ものにしていくのです。

    そのため、教員養成に携わるようになったとき、「『一緒に勤めたい』と感じる
  教員養成」を学生への指導・助言のコンセプトとしました。上記の学生への対応も、
   おこがましいことではありますが、献身的な面持ちで支えてくれていることへの感
  謝の念を持てる教員として育ってほしいという願いによるものです。思いが通じて
  いるかどうかはわかりませんが、指導後に「ありがとうございました。」の言葉に
  加え「お忙しいなか」、「ご無理を申して」など、こちらの状態を気遣う態度を見
  せる学生もだんだんと増えています。

    交流教員の任を解かれ公立学校に戻ったとき、「一緒に勤めたい」と念じて指導
   してきた彼らと同僚になることもあるはずです。そのときに「一緒に勤めることが
   できてよかった」と実感する毎日を送るべく、今後も学生の指導に邁進するつもり
   です。

◆山下先生のプロフィールを大学フォト内に掲載していますので、ご覧ください。

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         メールマガジン第143号 2010年10月25日