★☆★☆ ⇒《話題!!》
「教員免許更新制」について・・・・・・・有馬 道久先生に聞く・・・・・・・

――来年から「教員免許更新制」が始まります。教育学部では有馬先生がコーディ
ネータ役ですが、そもそもこの制度はどういう経緯でできたものなのですか?

 この4月から教員免許状更新講習を担当することになりました有馬です。どうぞ
よろしくお願いします。この制度の検討は、小渕首相の私的諮問機関であった教育
改革国民会議の報告(平成12年)で、「免許更新制の可能性を検討する」とした
ことが始まりと言えるでしょうか。その後、中央教育審議会で慎重論や推進論の立
場から検討が重ねられた結果、平成18年7月の中教審答申において、「教員免許
更新制の導入−恒常的に変化する教員として必要な資質能力の確実な保証−」と述
べられ、更新制を推進する方向が打ち出されました。そして、平成19年6月の改
正教育職員免許法の成立により、平成21年4月1日から最新の知識技能を身に付
けることを目的とした教員免許更新制が導入されることになったわけです。

――香川県では香川大学が主幹大学になって免許更新講習(試行)を担当しますが、
今年からもう予備講習を始める予定でしたね。どんな中身なのですか?

 来年度から始まる本講習では、受講教員一人ひとりが、「教育の最新事情」につ
いて12時間、「教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項」について1
8時間、計30時間の講習を履修して修了認定をもらう必要があります。今年、香
川大学を主幹大学にして実施する試行講習では、「教育の最新事情」に関する共通
36時間分と「教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項」に関する計5
4時間分の選択講座を開設します。選択講座には、たとえば、「郷土の歴史を学ぶ」
「商業とまちづくり」、「電磁気と情報」、「カウンセリング理論を学ぶ」などが
あります。この試行講習を予備講習として指定してもらう申請を6月に行う予定で
すが、指定を受けますと、予備講習修了者は,平成23年3月31日が修了確認期
限の教員に限って、制度導入後の講習の全部又は一部が免除されます。香川大学の
行う予備講習では、最大で共通12時間分と選択12時間分が免除の対象となりま
す。

――香川県の教育委員会とはどういう連携をするのでしょうか?

 香川大学は講習の主幹大学として、講習全体の計画、受講受付から講習の実施と
修了認定、そして事後アンケートの実施と集計を担当することになります。一方、
県教育委員会は免許管理と更新に関する事務全般を担当することになります。しか
し、教員免許制度始まって以来初の更新講習の実施ですから、まだ多くの課題が残
されているのが実情です。そうした課題は、今年実施する試行講習をふまえて改善
していくのはもちろんですが、同時に、県教育委員会と連携して、県内の学校の種
類別や教科別の受講者の把握、受講教員のニーズの把握、講習内容や講習スケジュ
ールの調整などについて共同で調査したり、検討したりする必要があると考えてい
ます。

――講習にかかわるのは教育学部だけではないと聞きましたが、全学的にはどんな
協力体制が取られるのですか?

 この4月に本学の教職課程及び教員免許更新講習を実施運営する全学組織として
香川大学教職教育委員会が設置されました。その下に、2つの実施部会が置かれた
のですが、その1つが教員免許更新講習実施部会です。この部会は、すべての学部
と地域マネジメント研究科から選出された9人の教員と6人の担当係長、そして教
育・学生支援室の2人の担当者で構成されています。平成21年度から始まる本講
習では、教育学部で約105講座、他の学部でも各3〜7講座、合わせて約130
講座を開設する必要があります。ほとんどの講座は1講座6時間ですから1日講座
ということになります。したがって、実施部会は、これらの講座の講師依頼やスケ
ジュール調整、そして修了認定の作業を進めていくための中心的役割を担うことに
なりますが、その円滑な運営には教職員の皆様の全学的な協力が欠かせません。各
学部においては、課程認定を受け免許状を出しているという責任において、また、
重要な地域貢献の1つとして位置づけていただき、ご協力をお願いいたします。

――有馬先生は昨年度まで3年間、附属高松小学校の校長を務められていました。
現場の教員にとって、教員免許更新制はどういう意味があるのでしょう?

 現場の先生方は、校務、研修、研究などきわめて多忙です。時間の面から考える
と、「これ以上忙しくなるのはたまらん」と思っている先生もおられるかもしれま
せん。ですが、教育基本法の改正、学習指導要領の改訂をはじめ学校教育を取り巻
く状況は日々変化しています。その変化に対応する力量の向上が求められているの
もまた事実です。そのような意味からも最新の知識・技能を身につけるという教員
免許更新講習の目的を理解していただけるように努力していかなければならないと
思います。そして、教職10年経験者研修などの既存の研修と重なるところがある
とすれば、その解消にも協力する必要があるだろうと考えています。

 私たちにできることは、仮に最初は渋々受け始めた講習であっても、修了認定を
もらう時に受けて良かったと思い直していただけるような講習にしていくことだと
考えています。個人的意見ですが、受講者の先生方とともに私たち自身も成長して
いける更新講習を作り上げることが大切ではないかと思います。

――今日はどうもありがとうございました。
(ありま みちひさ、教育学部教授・副学部長、心理学)

   香川大学メールマガジン  第97号   2008年5月22日