★☆★☆ ⇒《話題!!》
―教育学部特別支援教室「すばる」について・・・・繪内 利啓先生に聞く・・・
                
――「すばる」が最近第38回博報賞を受賞されたそうで、おめでとうございます。
どんな賞なんですか?
えない:ありがとうございます。「博報賞」は、(株)博報堂が創立75周年を記
念して児童の教育支援を目的として昭和45年に設立した財団法人博報児童教育振
興会のもので、特別支援教室「すばる」は特別支援教育部門での団体受賞です。

――「すばる」の名前は知っていたのですけど、中身はよく知りませんでした。ど
うして教育学部に特別支援教室「すばる」が設けられたのですか?
えない:平成12〜14年度の3年間、文科省による研究開発学校の指定を附属幼
稚園・坂出小・中学校・養護学校の4校園が受け、その1部門として『学習不振・
学習困難児・学習障害(LD)児の指導方法の開発』が取り上げられました。研究
の過程で、特別な教育的支援を必要とする児童生徒が通常学級内に数多くおり、彼
らへの学習指導法の開発が強く求められていることが明らかになりました。そこで、
研究開発で得られた指導法や連携体制などのノウハウを継承して、これからの公立
学校における「特別支援教室」の在り方を検討し,発達障害のある子どもやその疑
いのある子どもの指導・支援のための実践的な研究開発のために、附属坂出中学校
隣の教育実践総合センター坂出分室の一部を改修して、平成15年4月1日に特別
支援教室「すばる」を開設しました。

――どんな取り組みをしているのですか?
えない:学習支援として、幼児から中学3年生までの、通常学級に在籍し,明らか
な知的障害を伴わない発達障害(LD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー症
候群)などの子ども達に対して、放課後通級という形で一人ひとりにあわせた指導
を行っています。また社会性育成指導として、対人関係につまずきのある子どもた
ちへの小集団社会的スキル訓練(SST)にも取り組んでいます。この他、保護者
や教員に対する個別相談も行っております。過去4年間で315名が訪れています。

――新しいタイプの発達障害ですね。年平均で80名ほど来室ですか。思ったより
多いですね。最近こういう子どもが増えてきたということなんでしょうか。
えない:平成14年度の文科省の調査でこのような子どもたちが通常学級に6.3
%存在することが明らかになりました。つまり1学級に2人存在するということで
す。単に数が増えたというのではなく、教員および保護者の発達障害への認識が得
られるようになったこと、医療機関での発達障害の診断技能が上がったことなどが
関係していると言われております。

――確かに最近公立校に行くと、「あの子はADHDで」なんていう説明をよく受
けるようになりましたね。対処も早くなっている感じです。香川県の先生とはどん
な連携をしているのですか?
えない:保護者による「すばる」への申し込みは、子どもたちの担任を必ず介する
というシステムを取っているので、保護者と担任と「すばる」との連携が前提なの
です。また、県教委からの教員研修派遣および子育て支援課からの保育士研修派遣
を受け入れています。さらに、県教委と協力して、小中学校に配置が義務づけられ
た特別支援教育コーディネーターの養成研修に講師派遣をしたり、「すばる」を研
修会場として養成研修を行ったりしています。

――大学院に今度発足する現職用の特別支援教育コーディネータ専修もここにかか
わることになっていましたね。ニーズは多いようですが、現場の先生はどんな悩み
を持っているのでしょうか?
えない:発達障害のある子どもが通常学級にいるという認識は広く受け入れられて
おりますが、彼らを通常学級内でどのように教育・指導してゆけばよいのか、校内
の体制をどう組めばよいのか、そのニーズに最も適切な相談機関や医療機関はどの
ようなものか、(本人および他の)保護者の理解を得て協力体制を築くためにはど
うすればよいのかといった具体的な方策についての悩みが多いようです。

――これからもがんばってください。今日はありがとうございました。
えない:ありがとうございました。
(えない としひろ、教育学部教授 特別支援教育)

   香川大学メールマガジン  第85号   2007年11月8日