★☆★☆ ⇒《話題!!》 
「実践的な指導力育成」・・・・・・・・久保 直人先生に聞く・・・・・・・・

――先生は本年度から香川県教育委員会との交流人事で教育学部に来られたそうで
すが、これまでの教職経験をお聞かせください。
くぼ:20年前に本学の教育学部を卒業し、高松市内の小学校3校(高松市立二番
丁小学校、香川大学教育学部附属高松小学校、高松市立栗林小学校)に勤務しまし
た。小学校勤務ですから、学級担任として教科を問わず指導するのが基本ですが、
私の場合担任だけでなく、専科教員(理科)も経験しました。大学ではこれまでの
教職経験を生かし、実践的な指導力を持った教員育成に努めたいと考えています。

――教員にとっての実践的な指導力とは、どのようなものですか?
くぼ:定義については、いろいろな考え方があるようですが、「教科指導・生徒指
導・学級経営・地域教育等の教育実践に関する包括的な指導力を兼ね備え、子ども
・学校・地域の実態に合わせて柔軟かつ創造的に指導内容・方法を採用し、それを
遂行する能力」としておきます。(教師教育学会大会 2005年9月開催)にお
ける公開シンポジウム「教師の実践的指導力の養成と地域連携」のテーマ説明より)
大変幅広い要素を含む、総合的な力であるととらえることができます。

――どのようにして実践的な指導力を育成しようと考えていますか?
くぼ:実践的な指導力のなかでも、教師が最も力を入れなければならないのが教科
指導に代表される日々の授業をよりよいものにしていくことだと考えます。小学校
高学年の子どもたちを例に考えてみると、毎朝8時過ぎから学校での活動が始まり、
午後3時半過ぎに下校するまで、最も多くの時間を費やすのが授業です。教師は授
業を充実させることで、子どもたちの意欲を育て、学ぶ喜びを味わわせるとともに、
達成感や成就感を高めるよう努力することが大切だと考えます。したがって、よい
授業を作るためにはどのようにすればよいのかを中心に指導しています。

――授業作りという側面から実践的な指導力育成に取り組んでいるんですね。具体
的にはどのような指導をされていますか?
くぼ:教師は授業を行う際に、学習指導案というものを作ります。これには授業の
目標や子どもの学習活動、予想される子どもの意識の流れ、つまずいている子ども
に対する教師の支援などを記述します。目標や学習活動については、文献資料や過
去の実践記録などを基に学生自らがいろいろと工夫できるのですが、意識の流れや
支援になると、なかなかイメージがわかないようです。そこで、これまで私が小学
校教諭として経験してきた子どもの意識の把握の仕方を伝え、子どもの側に立つ支
援を様々な視点から工夫するという指導をしています。

――指導されてみての手応えはどうですか?
くぼ:子どもの意識の流れについては経験がものを言うこともあり、そう簡単に予
想はできにくいのですが、つまずいている子どもへの支援についてはずいぶんと具
体的にその方策を考える力がついてきているように思われます。たとえば、教師の
支援を考える場面で「分からない子どもに対しては〜のようにさせる。」というよ
うに、文末に「〜させる。」という記述をよく使っていたのですが、これでは教師
がどんな工夫をするのかがイメージできません。そこで、「〜させる。」ために教
師はどんな行動を具体的にとるのかを考えさせました。すると、「〜させる。」と
いう表現から「〜を助言する。」、「〜のヒントを与える。」、「〜を見るよう指
示する。」というような具体的な教師の行動を意識できるような表現に変わってき
ました。

――今後の課題としては、どのようなものがありますか?
くぼ:私自身の課題としては、学生の意識の流れを予想し、どのような支援を行う
とよりよい授業になるのか追究することです。(笑)なにせ大学生の心を読むこと
に関してはまだまだ初心者なものですから・・・。小学校でも大学でも1時間1時
間の授業を大切にすることが基本ですね。

――本日はどうもありがとうございました。
(くぼなおと、教育学部助教授)


   香川大学メールマガジン  第72号   2007年3月8日