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小中学校の教育現場から交流人事・・・・・・阪根健二先生に聞く・・・・・・・

 香川大学教育学部では、2003年度に小中学校の教育現場から3名の先生を、
専任教員(助教授)として迎える全国でも初めての交流人事を行いました。今日は、
そのお一人である阪根先生にお話をうかがいました。

――先生はもともと中学校の教頭先生だったそうですね?
さかね:はい、坂出市の中学校で教頭をしておりました。実はそこでは1年間だけ、
その前は、香川県教育委員会義務教育課で主任指導主事を5年勤務しておりました。
その時に、本学の客員教授(1999年から)として、生の教育現場について学生
に指導するという機会がありましたので、それがこういった人事のきっかけになっ
たのかも知れません。

――教育学講座に所属されているそうですが、先生の専門は何ですか?
さかね:私は、中学校では、技術・家庭科と社会を教えておりました。ちょっと変
わった取り合わせですが、本来の専門は電気で、大学院時代は電気(集積回路)で
修士論文を書きました。ところが、大学院時代に、すでに教員免許を持っていたこ
とで、近隣の中学校に非常勤講師としてアルバイトに行ったことが今の私を作った
のかも知れません。

――何か面白そうな経緯ですね。それが、中学校教師になったきっかけですか?
さかね:電気で研究者になりたいという希望があったのですが、当時は、コンビニ
のバイトも時給200円程度でも、学校の講師は時給1,000円以上と破格だっ
たので、それが一番の理由で講師をOKしたように思います。ところが、アルバイ
ト気分に行った中学校が猛烈に荒れていて、何名もの先生が生徒に殴られているく
らいすごい学校だったのです。院での研究との掛け持ちも大変で、おまけに厳しい
教育現場だったのですが、生徒と関わってみると、意外な一面を垣間見たりして、
次第にバイトという気持ちから、教師という仕事の崇高さや面白さへと、徐々に意
識が変わっていく自分が不思議でしたね。結局、香川県の教員試験を受け、おまけ
に通信教育で、小学校や中学校の社会科の免許を取得したわけです。

――厳しいのに、教師になりたいという気持とは不思議ですね。
さかね:今、教育学部の学校教育教員養成課程は、教師を目指して入学する学生が
ほとんどですが、入学期には何気なく教師になりたいという夢を持っています。そ
れはそれでいいのですが、様々な専門的な勉強や、教育実習等の厳しい体験が、次
第に強く教師への希望へと変わっていくのです。これは、モチベーション(内的動
機付け)も大切ですが、インセンティブ(外的な意欲刺激)が、教師への道への大
きな意欲付けになっているのでないかと思っているのです。

――それはどういうことですか?
さかね:つまり、教育現場の実際を体験する(あるいは知る)ことで、教育の意義
や使命感を感じることなのでしょうね。何のために仕事に就くのかと学生に聞くと、
経済的な意味よりも、自己実現や社会貢献を一番にあげる学生が多いのです。それ
だけ、自分がどう生きるのかという命題を考えることが教育の根本なのでしょうね。
自分を思い返すとそういった経緯をたどっていますから、是非、今の学生に是非追
体験をしてもらいたいと思っています。

――授業でも何か工夫をされているのですか?
さかね:はい。3名の現場教員が担当している授業は、まさに実践的な授業構成を
主としています。それが教員を目指す学生にとって、強いインセンティブになると
思っています。

――具体的にどういったことですか?
さかね:私の場合ですが、教養科目(後期)に、学校の危機管理といった内容を取
り上げ、そこでは昨今の教育問題を赤裸々に扱っています。気が重くなるような話
題ばかりなのですが、講義終了後の授業評価では、教職への意欲が湧いたという結
果が出ています。また、専門科目では、出来るだけ校外での子どもたちとの触れあ
いができる授業構成を考え、子どもたちと、お遍路(お接待)実習や、ニューレオ
マおもちゃ王国での引率実習など、実践学を重視しています。

――確か、今年度からおもちゃ王国との共同研究を始められたと聞いておりますが、
どういったものですか?
さかね:遊びから学びというテーマで、子ども理解の在り方や対処方法を学生に体
験させたいと思っていましたが、たまたま、おもちゃ王国から共同研究の申し入れ
があり、教育学の先生と一緒に研究を行うことになりました。ここでは、ニューレ
オマおもちゃ王国といったフィールド内で、子どもの視点を観察しながら、安全等
に配慮した学習プログラムを作りたいと考えています。

――面白そうですね。学生の反応は?
さかね:はい。すでに多くの学生から、是非研究に参加したいという申し出があり
ます。おもちゃというベーシックな手段が、どう学びに結びつくか興味津々ですが、
それだけ、香川大学の学生の意欲はすごいなあと感じています。必ずいい教師にな
れると確信しています。

――何か教師になるということは、厳しさを知りながらも、楽しそうな夢を追いか
けるという思いが強く感じられましたが、やはり、先生の楽しそうな笑顔が印象的
で、香川大学に現場の先生方が来られていることの意義を改めて感じました。長い
時間、お話いただきありがとうございました。
(さかねけんじ、教育学部助教授、学校教育)


   香川大学メールマガジン  第33号   2005年5月12日